メキシコ国税庁、税務調査の透明性確保に向けた「ベストプラクティス」を導入
(メキシコ)
調査部米州課
2026年01月09日
メキシコ国税庁(SAT)は1月5日付でプレスリリースを出し、投資に公平な条件を整え、納税者に法的な安心を提供するため、2026年に向けた透明性の高い「ベストプラクティス」を導入すると発表した。具体的には、次のことを行うとしている。
(1)「2026年納税者対応・徴税マスタープラン」の発表
(2)(納税者の)納税義務違反については、1回のみ税務調査を行う
(3)税務調査のプロセスにおいて、調査対象領域に関してのみ情報提供を要求し、(納税者の全ての納税義務に関する)100%の資料を要求しない
(4)主に次の行為を行う納税者を調査対象とする
- 偽造の請求書や偽造の給与支払い証明書を用いる
- 繰り返し税務上の損失を計上する
- 偽の損金を用いる、または不正な損金算入を行う
- 申告外の収入を得る
- 税制優遇措置を不正に利用する
- 輸入や仕入れと販売の間に不整合がある
- 市場価格を下回る価格で商品を輸入する、または非関税規則・規制に違反する
- 従業員の個人所得税の源泉徴収納税を行わない
- タックスヘイブンとの取引を行う
- 不当な還付請求を行う
- 業界平均と比較して著しく低い「実効税率」(注1)で納税する
(5)国内全てのSATの事務所において、割引、未確認入金、取引の実質性、マーケティング、輸入、非関税規制、ならびに貿易関連の許可・認証・承認などについての税務調査手続きについて、統一した適用と基準を保証する
(6)自然人に対する税還付は平均5営業日以内、法人に対する税還付は30営業日以内に行う(法定期限は40営業日)
(7)納税者が告発・通報を行うための窓口(注2)を案内する
強引な税務調査に進出日系企業も苦慮
国立統計地理情報院(INEGI)の調査
によると、メキシコでは納税義務を履行していないインフォーマルセクターが2024年時点でGDPの25.4%、就労人口の55.4%に及ぶため、徴税の裾野が非常に狭い。2018年以降の左派政権下では抜本的な税制改革が一切行われず、また政権の支持基盤である貧困層が多いインフォーマルセクターをフォーマル化する政策はほとんど実施されてこなかった。そのため、多国籍企業を中心に大企業に対する税務調査が頻繁に行われ、限られた企業への徴税を強化することにより、税収を確保してきた。SATの公開データ
によると、2025年1~9月の税務調査による徴税額は約7,141億ペソ(約6兆2,260億円、1ペソ=約8.72円)で、前年同期比では3.5%増だが、3年前の2.4倍、6年前の4.2倍、左派政権発足前の2018年同期と比較すると5.1倍に及ぶ。
進出日系企業もSATの税務調査を受けており、SATからの指摘の中には理不尽なもの(注3)も見受けられる。また、膨大な資料を何度も要求されるため、税務調査に対応するのは大変な作業で、日々の操業にも影響を及ぼすと指摘する声も多い。今回発表された「ベストプラクティス」が本当に実現するのであれば、進出日系企業にとっては朗報といえる。
(注1)一般的に理解されている実効税率の概念とは異なる。企業の利益ではなく売上高に占める実際の納税額を「実効税率」と称し、大規模納税者の納税額を基に2016~2019年、2020~2021年の産業分野別平均値を専用ウェブサイト
で公表している。ロイヤルティーの支払いなど費用控除が多い業界ほど、「実効税率」は小さくなる。
(注2)窓口として、具体的には電子メールアドレス(denuncias@sat.gob.mx
)、電話番号〔55-6272- 2222/55-6272-2728(内線8)〕が指定されている(メキシコ国税庁ウェブサイト参照
)。
(注3)例えば、日本本社が商標権を持っている商品についてメキシコ現地法人が営業活動を行った場合、当該営業活動は本社の商標の価値を高める行為であり、現地法人の操業にとって必要不可欠な活動ではないので損金算入を認めないという指摘や、実ビジネスにおいては市場環境によって原価割れ販売を強いられるケースがあるが、原価割れ販売は営利活動を行うことを前提とした企業にはあり得ないと決めつけ、売り上げまたは仕入れの校正を行うべきといった指摘がみられる。
(中畑貴雄)
(メキシコ)
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