米カリフォルニア州、「富裕層資産課税案」をめぐり議論

(米国)

サンフランシスコ発

2026年01月27日

米国カリフォルニア(CA)州では、純資産10億ドル超の富裕層を対象に、1度限りの5%の資産課税を行う住民発議「ビリオネア・タックス・アクト」をめぐり、政治・経済の両面で議論が起きている。

同案は、医療関係労働者組合のSEIU-UHW(注1)が、連邦によるメディケイド削減を受け、州のメディ・カル(Medi‑Cal)(注2)財源を補う目的で2025年11月に住民発議(注3)として提出。この資産課税による税収の90%を医療に、10%を教育・食糧支援にあてる計画を発表した。州民発議に必要な署名数を得た場合、州民投票が行われる。

同州のギャビン・ニューサム知事(民主党)は、CA州の個人所得税は高所得層に集中しているということへの懸念、また州外への資本・富の流出を招くことから、本案に反対している。「州経済にとって有害。SEIU-UHWとも4カ月にわたり交渉してきた。法案阻止に全力をあげる」と公言した(政治専門紙「ポリティコ」1月12日)。医療財源確保を掲げるSEIU-UHWと、資本などの州外流出を懸念する知事が正面から対立する構図となっている。

ベイエリアのテック企業の経営者の反応も分かれる。グーグルの共同創業者であるラリー・ペイジ氏らによる資産・事業の州外への移転を複数のメディアが報じている。一方、半導体大手エヌビディアのジェンスン・ファン創業者兼最高経営責任者(CEO)は出演したブルームバーグのテレビ番組の中で、「シリコンバレーに住むことを選んだので、適用される税は受け入れる」と表明した(CNBC1月7日)。

米国の経済ニュースメディアのCNBCが、1月に実施した世論調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注4)では、初見では、支持48%・反対38%・未定14%となったものの、法案の肯定的・否定的情報を説明したのちには、支持46%・反対44%と拮抗(きっこう)する結果となった。また、有権者の69%は、「富裕層は弁護士や会計士を雇って税金を回避する」と回答しており、想定よりも税収は集まらないとみられる。

(注1)Service Employees International Union- United Healthcare Workers West(サービス従業員国際組合・カリフォルニア州西部医療従事者支部)の略称。

(注2)カリフォルニア州が運営するメディケイド・プログラム。低所得層や特定の条件を満たす住民向けの医療保険制度。

(注3)住民発議制度は、CA州民が知事や州議会によらず法律や州の憲法改正手続きを行う手段。

(注4)実施時期は2026年1月6~12日。対象者は11月選挙の投票予定者800人。

(芦崎暢)

(米国)

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