中国、医療保険個人口座の共同利用の適用地域を全国に拡大

(中国)

北京発

2026年01月16日

中国の国家医療保障局、財政部は1月9日、「従業員基本医療保険個人口座の省を越えた共同利用の推進に関する通知」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。本通知は、従業員基本医療保険個人口座(注1)の「省を越えた共済」(注2)の適用地域を全国に拡大し、医療費の個人負担軽減を図るものとなっている。同口座は、基本医療保険加入者の指定病院での医療費や、指定薬局での医薬品・医療器械・医療消耗財の購入に使われるもの。

通知では、「省を越えた共済」の適用対象を従業員基本医療保険加入者の家族・親族(注3)とし、共済対象者が基本医療保険(従業員基本医療保険と都市・農村住民基本医療保険を含む)に加入していることが必要だとした。また、共済対象者は、専用のアプリ(全国医療保険情報プラットフォーム)を通じて、加入者の個人口座残高を、指定病院での医療費の支払いや指定薬局での医薬品の購入および都市・農村住民基本医療保険、長期介護保険(注4)の保険料納付に充てることが認められるとした。

中国は近年、従業員基本医療保険個人口座の利用に関する改革を進めている。国務院が2021年4月に発表した「従業員基本医療保険の外来診療共済保障制度の確立・整備に関する指導意見」では、同個人口座の利用について、従業員基本医療保険の加入者本人のみならず、加入者の配偶者・父母・子女の利用が認められた。また、国務院は2024年8月には、「長期的に持続可能な基本医療保険制度の整備に関する指導意見」を発表し、個人口座の利用対象者をさらに拡大し、兄弟姉妹、祖父母、孫、外孫の利用も可能とした。個人口座の使途についても、通院費や薬代に加えて、対象者の都市・農村住民医療保険の保険料納付に用いることが認められた。さらに、2024年12月から江蘇省、河北省など9省の31地域で個人口座の「省を越えた共済」が試行されていた。

今回の通知により、全国範囲で省を越えた個人口座残高の共同利用が可能となった。国家医療保障局は今回の措置により、個人口座の遊休資金を家族・親族間で相互に活用可能となったことで、同口座の資金の使用効率の向上や医療費の個人負担の軽減につながるとした。

(注1)中国の公的医療保険制度は、都市で働く会社員などが加入する「都市従業員基本医療保険」と都市の非就労者・農村住民を加入対象とする「都市・農村住民基本医療保険」で構成されている。「都市従業員基本医療保険」の保険料は、企業が従業員の賃金総額の6%(地域により異なり、各地の状況に応じて調整される。北京市では2021年1月から9.8%となっている)、従業員が前年の平均賃金の2%を負担する。従業員負担分は全額、医療保険専用の個人口座で積み立てられる。企業負担分は専用の基金に納められ、通院費や薬代などの給付に充てられる。

(注2)「省を越えた共済」とは、従業員基本医療保険の加入者が専用のアプリを通じて自身の個人口座残高を異なる省で生活している家族・親族と共有できるようにする仕組み。これまで中国の公的基本医療保険は「省」単位で管理されていたため、離れて暮らす家族・親族が加入者の個人口座を利用することはできなかった。

(注3)家族・親族には配偶者、父母、子女、兄弟姉妹、祖父母、孫、外孫が含まれる。

(注4)中国では全国的な介護保険制度は未整備である一方、一部の都市においては、長期介護保険制度が試行されており、制度の内容は都市によって異なる(2025年1月7日付地域・分析レポート参照)。

(張敏)

(中国)

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