ロヒンギャ難民問題は深刻化、セーブ・ザ・チルドレンによる継続支援
(バングラデシュ、ミャンマー)
ダッカ発
2026年01月15日
子供を支援する国際NGOのセーブ・ザ・チルドレンは、2012年からミャンマーからのロヒンギャ難民(注)とバングラデシュ南部のコックスバザール県に支援を提供している。特に2017年8月以降、ミャンマーで起こった大規模な暴力や人権侵害を理由に、過去に類を見ない規模のロヒンギャ難民が同県に退避するようになった。難民キャンプには、2025年8月時点で約120万人が居住しており、その数は日を追うごとに増加している。
ミャンマー政府はロヒンギャに国籍を認めていない一方、バングラデシュ政府は難民条約を批准しておらず彼らを難民と認めていない。セーブ・ザ・チルドレンは、このはざまに置かれた無国籍のロヒンギャ難民と受け入れ側のコックスバザール県の事情を勘案しながら、児童労働、虐待、児童婚への取り組み、水やトイレ施設の整備などに関して、両者へ支援を提供し続けている。
コックスバザール県では、子供が自らの体験を写真に収め発表する写真展の開催を通じて自治体や警察に啓発・政策提言活動を行い、子供が問題に直面した際にとるべき行動を学べるセンターを運営している。
写真展における来場者と子供・青少年との対話(セーブ・ザ・チルドレン提供)
ロヒンギャ難民に対しては、宗教上、活動制限がある女性の社会進出の促進を目的に建築の知識や技術を教え、コックスバザール県の青少年にはライフスキル・ICT(情報通信技術)スキルを身につけてもらうための移動式研修センターを運営している。
移動式研修センターで学ぶ青少年の様子(セーブ・ザ・チルドレン提供)
一方、バングラデシュでは、生活の苦境から、ロヒンギャ難民の市街への流入や違法労働、治安悪化といった問題が表面化している。各国政府や国際機関も解決を図っているが、米国国際開発庁(USAID)の解体などにより活動資金は大きく減少し、支援団体の人員削減や活動縮小を引き起こしている。これは、企業や民間団体の関与がより一層大きな支えになるゆえんでもある。セーブ・ザ・チルドレンのバングラデシュ駐在員、田部井梢氏は「ロヒンギャ難民やコックスバザール県への支援は、政治や歴史、宗教の価値観、支援のバランスといった複雑な要素がからみ合っている。支援元となるドナーの存在は最も重要な活動の基礎であり、企業との連携をさらに強化していきたい」と語る。
セーブ・ザ・チルドレンの職員ら(セーブ・ザ・チルドレン提供)
バングラデシュ暫定政権のムハンマド・ユヌス首席顧問は2025年8月25日、コックスバザール県で行われたイベントで、ロヒンギャ難民の帰還する権利、持続的支援、暴力の終結、対話、国際社会と地域社会の役割、民族浄化への反対、責任追及という7項目について国際社会の協力を求め、9月30日に国連総会ハイレベル会合でも同様の提案を行った(「デーリー・スター」2025年9月30日付)。深刻化するロヒンギャ難民問題について、多様な支援が期待されている。
(注)ミャンマーのラカイン州を中心に暮らしてきたイスラム系の少数民族。
(片岡一生、箕浦智崇)
(バングラデシュ、ミャンマー)
ビジネス短信 216be2c227bda0d7




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