チリ大規模森林火災で政権移行期に異例の共同会見、米州各国が支援を表明
(チリ、米国)
サンティアゴ発
2026年01月21日
チリ中南部のビオビオ州、ニュブレ州、ラ・アラウカニア州で大規模森林火災が発生し、被害規模が急速に拡大している。報道によると、1月20日時点で死者20人、住宅約590戸が焼失し、数万ヘクタールが焼けている。政府は大災害事態宣言を発令し、ビオビオ州の一部では夜間の外出禁止措置が導入された。
ガブリエル・ボリッチ大統領は1月19日、モネダ宮殿(大統領府)で次期大統領のホセ・アントニオ・カスト氏と会談し、火災対応および復旧策について協議した。会談後の共同記者会見で、ボリッチ大統領は「政権移行によって支援物資や緊急住宅の提供、復興プロセスに遅れが生じないよう、必要な調整を行うことで合意した」と述べた。カスト氏も「今後の復興段階では、正確なデータと被害の把握が極めて重要であり、その点を政府に求めてきた。これまでの政府側の適切な対応に感謝する」とコメントした。
共同記者会見では2つの演台が設置され、政治的な立場の異なるボリッチ大統領とカスト氏が並んで声明を発表するという異例の形式が採られた。政権交代期であっても国家として統一的な対応を継続する姿勢を国民に示す、象徴的な場となった。
またボリッチ大統領は、メキシコ、アルゼンチン、パラグアイ、米国、カナダ、ブラジル、ウルグアイから支援を受けたことに謝意を示した。ブランドン・ジャッド駐チリ米国大使は1月18日、SNSで「トランプ大統領から、森林火災と闘うチリを支援するための援助提供が許可された。最も厳しい時こそ、米国はチリのコミュニティ、生命、天然資源を守るため、具体的行動で支援する」と述べた。
経済・ビジネス面では、今回の大規模森林火災の最も直接的な影響を受けているのが、チリの主要産業の1つである林業だ。この地域には植林地が集中しており、チリの林業・パルプ・板材の2大企業のCMPCとアラウコは、主要植林地や製材・パルプ工場の多くをこの地域に配置している。植林地の焼失面積拡大に加え、物流・輸送面での損害も懸念されている。木材業界団体CORMAによれば、林業各社は消火隊員を動員し、航空機や重機の提供などを通じて対応に当たっている。
通信分野では、エンテル(Entel)、クラロ(Claro)、ウォム(WOM)、モビスター(Movistar)など複数の通信事業者が政府の要請に応じ、被災地向けに無料通信やデータ利用の開放、未払いによる停止回線の一時復旧などを実施した。避難指示や救助活動には通信が不可欠で、非常事態下で住民の通信手段を確保するための措置となっている。
(高橋英行)
(チリ、米国)
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