オーストラリアで16歳未満のソーシャルメディア(SNS)利用を制限、 事業者に「合理的措置」義務付けへ
(オーストラリア)
シドニー発
2025年12月17日
オーストラリア連邦政府は12月10日、16歳未満による主要ソーシャルメディア(SNS)の新規アカウント作成および既存アカウントの保有を制限する法律を施行した。国家として世界で初めて年齢に基づくSNS利用規制となる。対象となっているプラットフォームは、フェイスブック、インスタグラム、ユーチューブ、TikTok、スナップチャット(Snapchat)、X(旧Twitter)、Kick、Reddit、Threads、Twitchの10社(12月現在)で、違反した場合には運営企業に対して最大で約4,950万オーストラリア・ドル(約51億円、豪ドル、1豪ドル=約103円)の罰金が科せられる可能性がある。
同措置は、2024年にオンライン安全法(Online Safety Act 2021)が改正され、ソーシャルメディア最低年齢枠組み(SMMA)が導入されたことを受け制定された。政府および規制当局であるオンライン・セーフティ委員会(eSafety Commissioner)は、近年増加する若年層のソーシャルメディア利用に伴ういじめ、依存、心身への悪影響などのリスクを重く受け止め、オンライン被害防止と、健全な発育環境の確保を目的に導入した。政府は、対象となるSNSプラットフォーム運営企業10社に対し、16歳未満のオーストラリア国民がアカウントを作成または保有できないよう「合理的な年齢確認措置」を課す義務を定めている。罰則はプラットフォーム側に課され、子どもやその保護者が罰せられるものではない。
「合理的な年齢確認措置」として、具体的には、利用者の自己申告、生年月日確認に加えて、顔認証や行動データによる「年齢推定(Age Inference)」技術など多様な方法が認められている。一方、公共放送ABCによると、「技術上の限界や回避手段」として、偽年齢申告、VPNを使ったアクセス、海外版アプリの利用などによる抜け穴の懸念も指摘されており、すべての違法アクセスを完全に防ぐのは容易ではないとの見方も示されている。
スローガン「Let Them Be Kids(子どもを子どもらしく)」を掲げるアンソニー・アルバニージー首相は、「この改革は子どもたちが『子ども時代』を取り戻すことを可能にする」と述べるとともに、同措置は完璧ではないと認めつつも、命を救う改革になると強調した。
(ストーリー愛子)
(オーストラリア)
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