韓国政府、洋上風力発電の拡大に向けた具体的計画を発表
(韓国)
ソウル発
2025年12月15日
韓国の気候エネルギー環境部は12月10日、「全政府洋上風力普及加速タスクフォース」を開催し、関係省庁合同による「洋上風力基盤設備(インフラ)拡充および普及計画」を発表した。
韓国では、洋上風力支援基盤施設の不足、資金調達の困難さ、複雑な許認可手続き、住民の受容性に関する問題などによって、洋上風力発電の商業運転容量が2025年基準で累計0.35ギガワット(GW)にとどまっている(注1)。これを踏まえ、2030年までに年間10.5GW、2035年までに年間25GWの普及を達成するため、計画を策定した。主な内容は次のとおり。
(1)普及拡大:港湾・船舶・金融など支援インフラの拡充および迅速な許認可支援
- 洋上風力支援港湾の拡充:活用可能な港湾施設の発掘、圏域別の新規施設構築により2030年までに年間4GW処理可能な港湾体制を構築する(注2)。
- 洋上風力専用船舶の確保:15メガワット(MW)級の大型洋上風力タービン設置船(WTIV)2隻を2030年までに早期に確保する。
- 国内金融支援の強化:国民成長ファンドや未来エネルギーファンドなど国家政策ファンドの活用による民間洋上風力投資の拡大。
- 許認可手続き支援体制の早期構築:環境影響評価や安全検査など落札事業の許認可支援のため「洋上風力発電推進団」を新設、早期発足(注3)
(2)発電単価の引き下げ:現在1キロワット時(kWh)あたり330ウォン(約36.3円、1ウォン=約0.11円)台の発電単価を、2030年には250ウォン以下、2035年には150ウォン以下を目指す。
- 入札制度の効率的な運営:2026年の入札において、軍事作戦上の影響の有無を調査した洋上風力発電事業の参画を受け付け、第1四半期中に固定価格契約競争入札を推進する。また、2026年上半期に「2035洋上風力長期入札ロードマップ」を発表する。
- エネルギーハブ(変電所)の構築:洋上風力発電所の近隣地域(島または海岸沿い)にエネルギーハブを構築することで、海底ケーブル区間を短縮し発電単価の引き下げにつなげる。
- 官民推進体制の構築:政府機関、製造会社、電力会社、研究開発機関、学識者、シンクタンクなどから成る「洋上風力産業競争力強化委員会(仮称)」(注4)を発足し、コスト削減方法を検討する。
(3)産業競争力:20MWタービンの開発、浮体式洋上風力技術の実証
- 研究開発・実証支援:タービンの研究開発支援、タワー・浮体構造物・ケーブルなど構造物全体のコスト削減および輸出の支援。
- 浮体式洋上風力発電の開発・実証:浮体・係留システム・ダイナミックケーブルなど、浮体式洋上風力発電における重要技術の開発支援および実証基盤を構築する。
(4)受容性の向上:「風の所得」標準モデル設計による、住民と共存する洋上風力の推進
- 地域の漁業従事者や住民が協同組合などを通じて洋上風力事業に投資し、発生した利益は分配するほか公共事業に活用する。
(注1)発電事業許可ベースでは35.8GW(104カ所)であるものの、商業運転ベースでは0.35GW(11カ所)とその1%水準にとどまっている。
(注2)現在の洋上風力支援港は南西部の木浦新港のみで、年間処理能力は0.6GWにとどまる。浦項やセマングムの既存港湾の機能拡大、仁川や蔚山などの新規港湾開発、海南など民間が開発した施設の港湾指定などを通じ、普及基盤を拡大する。
(注3)「洋上風力発電推進団」は、2026年3月の洋上風力特別法(2025年3月5日記事参照)の施行以降に発足予定だったが、2025年内に発足させる。
(注4)英国のOWIC(Offshore Wind Industry Council)の成功事例をベンチマークして運営することを想定。
(橋爪直輝)
(韓国)
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