フルタイム時間給労働者の平均月額賃金、女性が男性を上回る
(フィリピン)
マニラ発
2025年12月17日
フィリピン統計庁(PSA)が11月に公表した2024年職業別賃金調査によると、フルタイムの時間給労働者の平均月額賃金は2万1,544ペソ(約5万6,014円、1ペソ=約2.6円)で、前回調査(2022年)の1万8,423ペソから上昇した。
業種別では、情報通信業が4万3,676ペソと最も高く、専門サービス・科学技術分野が3万6,096ペソ、電気・ガス・蒸気・空調供給業が3万5,188ペソで続いた。一方、農林水産業が1万4,615ペソと最も低く、最も高い情報通信業との差は約3倍に及んだ。
地域別では、マニラ首都圏(NCR)の平均月額賃金が2万9,310ペソで最も高く、カラバルソン地域(注1)が1万9,711ペソ、中央ビサヤ地方が1万9,084ペソと続いた。一方、ムスリム・ミンダナオ・バンサモロ自治地域は1万1,495ペソと最低水準で、首都圏との差は約2.5倍に達している。
また、男女間の賃金格差に関して、全国レベルでは女性労働者の平均月額賃金が2万2,236ペソと、男性の2万1,009ペソを上回り、女性の方が高い水準(ジェンダー賃金格差:マイナス5.8%、注2)となっている。地域別では、17の行政区域のうち11地域で女性の賃金が男性を上回った。特に差が大きいのはダバオ地域(マイナス16.5%)、西ビサヤ地方(マイナス11.7%)、NCR(マイナス10.3%)だ。一方、男性の賃金が女性を上回った地域としては、カラバルソン地域(6.3%)、コルディリェラ行政地域(5.7%、注3)、イロコス地域(4.7%、注4)が挙げられる。
2025年もフィリピン全土で賃上げ続く、日系企業の基本給も大半の職種で上昇
ジェトロは11月26日、「2025年度 海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」を公表した。調査項目の1つ「賃金実態」のうち、基本給・月額(平均値、2025年8月調査時点)に絞ると、フィリピンの製造業の作業員とマネージャーはそれぞれ、303ドル(前年調査から30ドル増)、1,075ドル(62ドル増)だった。エンジニアは428ドル(8ドル減)だった。一方で、非製造業に関して、スタッフは574ドル(3ドル増)、マネージャーは1,534ドル(93ドル増)だった。
フィリピンでは近年、全国的に最低賃金引き上げの動きがみられる。2025年6月末には、フィリピン労働雇用省(DOLE)傘下のマニラ首都圏地域賃金生産性委員会(RTWPB)がマニラ首都圏(NCR)の最低賃金を日額50ペソ引き上げることを発表した。NCR以外の主要地域でも2024~2025年に最低賃金引き上げ措置が進められており、RTWPBは全国5地域で2025年末までに追加の引き上げを協議するとしている(2025年8月15日記事参照)。
(注1)ルソン島南部に位置する地域、首都マニラの南東に広がる。
(注2)「ジェンダー賃金格差(Gender Wage Gap)」とは、男性労働者の平均月額賃金から女性労働者の平均月額賃金を差し引き、その差を男性労働者の平均月額賃金で割った値のこと。マイナスの値は、女性労働者が男性労働者よりも高いことを示す。
(注3)ルソン島北部の内陸部に位置する山岳地帯。
(注4)ルソン島北西部に位置する。コルディエラ行政地域の西側に隣接。
(杉山咲)
(フィリピン)
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