インド電子・情報技術省、AI開発ガバナンス指針を策定

(インド)

ニューデリー発

2025年12月15日

インド電子・情報技術省(MeitY)は11月5日、人工知能(AI)開発ガバナンスの基本的な枠組みを定めた「インドAIガバナンス指針」を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。AIの発展に向けて革新的なイノベーションを推進しながら、個人と社会の安全を確保するという、両立のバランスを築くことを目的としている。

ガバナンス指針として示された7つの基本方針は次のとおり。

  • 基盤は信頼:AI技術の発展に、バリューチェーン全体を通じた信頼構築が不可欠であることを基盤とする
  • 人間ファースト:AIシステムの最終的な制御や監督は人間が行うこととする
  • 制約より革新:利益の最大化とリスクの最小化を図りつつ、責任あるイノベーションを促進する
  • 公正と公平:AIシステムが偏見や差別の助長につながることのないよう、社会包摂的な発展を推進する
  • 説明責任:AIシステムの開発者や運用者の存在と責任を明確化する
  • 設計の明瞭さ:開発されたAIシステムの利用者が、その仕組みを容易に理解できるよう、明瞭な説明と透明性を確保する
  • 安全性・強靭(きょうじん)性・持続性:安全で異常検知機能を備え、環境に配慮した効率的な軽量モデルのAIシステムの導入を奨励する

また、AIの発展のための各種課題に対する提案もガバナンス指針に盛り込まれた。規制当局に対する提案としては、AI技術の発展を妨げかねない許認可制度やライセンス要件は、真に必要でない限り回避すべきである点や、有用で負担が少ない政策手段として何が適切か(業界規範、技術基準、勧告、拘束力のある規則など)を吟味し決定すべきである点などが挙げられている。AIシステムの開発や運用に携わる企業関係者に対しては、ITやデータ保護、著作権、消費者保護などの関連法令の順守の徹底や、AI関連の被害報告を受けた際の対応方針策定などを勧告した。

今回の指針は、独立100周年を迎える2047年までに「ビクシット・バーラト(発展したインド)」を実現するというビジョンの下、インド政府が「すべての人のためのAI(AI for All)」を目指すことを目的として、MeitYが2025年7月に立ち上げた起草委員会の産官学メンバーによって策定された。なお、インド政府のアジャイ・クマール・スード首席科学顧問は発表の場で、この指針は「グローバルサウス諸国を中心とした多くの国々にも影響を与えるだろう」と語り、自信をのぞかせた。

(リティカ・メータ、広木拓)

(インド)

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