米シリコンバレーでヒューマノイド・サミット開催、商業化の段階へ、日本発AIRoAも登壇
(米国、日本、中国)
サンフランシスコ発
2025年12月19日
ヒューマノイド(注1)・ロボットに特化した国際カンファレンス「ヒューマノイド・サミット
」が12月11~12日、米国カリフォルニア州マウンテンビューのコンピューター歴史博物館で開催された。設立から2年目を迎えた同サミットの創業者兼会長でALMベンチャーズ創業者兼ジェネラルパートナーのモダール・アラウィ氏は開会式において、ヒューマノイドや「身体化AI〔身体機能を持つ人工知能(AI)、embodied AI〕」はもはや「研究対象」にとどまらず、「どこで、どのように使うか」という商業化の段階に入った、との認識を示した。会期中は、ヒューマノイドの技術動向、商用化、投資、政策、国際競争、社会実装をテーマに、ディズニーやグーグル、中国のシャオペン(小鵬汽車)、日本からはAIロボット協会(AIRoA)
に加え、多くのスタートアップ企業が登壇した。来場者数は2,000人を超え、展示会場には54社が出展した。
(左)サンフランシスコ発スタートアップのTシャツを畳むデモ、(右)中国発スタートアップのヒューマノイド(ともにジェトロ撮影)
基調講演では、ヒューマノイド開発の現状と将来像が示された。ディズニーは、同社が手掛けるロボット技術の一例として、映画「アナと雪の女王」のキャラクター「オラフ」を模した歩行型ロボットを紹介し、2026年初頭に香港やパリのディズニーランドに登場する予定だと発表した。人間やキャラクターに近い外見を持つ、高度で娯楽性の高いロボットはすでに実用段階にある一方、職場や家庭で生産的な役割を担う「汎用(はんよう)ロボット」の実現には、なお時間を要するとの見方が示された。
米グーグル・ロボティクスは、「ジェミニ・ロボティクス」というロボット向けAIの取り組みを紹介し、ヒューマノイドを含む汎用ロボット開発では、視覚・言語・行動を統合した基盤モデル(VLAモデル、注2)に加え、環境や行動の結果を内部的にシミュレーションする「世界モデル(ワールドモデル)」の活用が重要になると強調した。ロボットが現実世界で試行錯誤を重ねる前に、仮想空間上で行動計画や失敗を学習することで、未知の環境への適応力や汎用性を高められると説明した。
(左)グーグルの基調講演、(右)日本のAIRoAの登壇(ともにジェトロ撮影)
中国の電気自動車(EV)メーカーのシャオペンは、自社で開発するヒューマノイド「IRON」を紹介した。自動運転技術で培った認識・制御技術を応用し、人間に近い動きを実現しているという。同社は、ハードウエアとVLAモデルを自社で垂直統合する戦略を採用し、自社エコシステム内での最適化と量産を優先する方針を示した。
日本から登壇したAIRoAは、日本のロボット産業の強みとして、製造現場で培われた高い信頼性、安全性、精密制御技術を紹介した。今後はハードウエアのみにとどまらず、AIモデルやソフトウエア企業との連携を通じたエコシステム構築が不可欠であり、国際標準化や海外スタートアップとの協業が重要になる、との認識を示した。また、日本発スタートアップO-ID
が登壇し、モジュラー式ロボット(注3)の開発を紹介したほか、ボイスエージェント(注4)を搭載したカスタマーサービス向けヒューマノイドを開発するOmakase.ai
の展示は、多くの来場者でにぎわいを見せていた。
(注1)人間の形状をモデルにした汎用二足歩行ロボット。
(注2)VLAは、Vision-Language-Actionの略で、AIが視覚情報(Vision)、言語情報(Language)、行動(Action)を統合的に理解し、行動する能力を持ったモデル。
(注3)細胞のようなモジュールと呼ばれる単位部品を組み替えることで、形状や機能を自由に変えられるロボット。
(注4)音声入力を理解し、AIが音声で自然に応答するシステム。
(松井美樹)
(米国、日本、中国)
ビジネス短信 f3c3fb0aecefe753




閉じる
