フランス電力、次世代原子炉EPR2建設費見積もりを728億ユーロに大幅引き上げ
(フランス)
パリ発
2025年12月24日
フランス電力(EDF)は12月18日、パンリー原発、グラブリーヌ原発、ビュジェイ原発の3拠点で進める次世代原子炉EPR2(改良型欧州加圧水型炉)6基の建設計画について、総額728億ユーロ(2020年の物価水準で換算)の予算見積もりを取締役会に提示した。これは2022年の当初見積もり517億ユーロを大きく上回る。
EDFは2026年に準備工事や設計作業を加速する予定で、取締役会は同年の予算枠として27億ユーロを承認した。初号機はパンリー原発で、2038年に稼働開始予定。その後12~18カ月間隔で新炉を順次運転開始する計画だ。
資金調達には、国による支援策が講じられる(2025年11月に欧州委員会に承認申請済み)。支援内容には、建設費の5割以上を賄う優遇金利融資、40年間の差額決済契約(CfD)、国家とEDFによるリスク分担が含まれる。差額決済契約の基準価格は、2025年3月の第4回原子力政策評議会(2025年3月24日記事参照)で、最大100ユーロ/メガワット時に設定する方針が決まっている。
フランス政府は同日、EDFから提出された見積もりを、国が定めたスケジュールに沿った「前向きな動き」と評価した。今後は首相直轄の「新型原子力に関する省庁間代表部(DINN)」が監査を行い、2026年3月末までに政府とEDFが合意する最終見積もりを確定する方針だ。2026年末までの最終投資判断を目指す。
EDFのベルナール・フォンタナ最高経営責任者(CEO)は、同日付の「ル・フィガロ」紙のインタビューで、今回の見積もりはEDFによる工期とコスト管理への強いコミットメントを示すもので、603億ユーロの基本コストに予期せぬ事態に備えた125億ユーロの予備費を加えたものだと説明した。さらに、EPR2建設プログラムの実現は、フランスのエネルギーおよび産業主権とエネルギー転換に大きく貢献すると主張した。
なお、フランス国内初の第3世代欧州加圧水型炉(EPR)であるフラマンビル原子炉は、当初の完成予定だった2012年から12年遅れの2024年に稼働を開始し、総工費は当初予測の33億ユーロから約4倍の132億ユーロに膨らんでいた(2024年9月10日記事参照)。
(山崎あき)
(フランス)
ビジネス短信 f1716abd61e9d696




閉じる
