2025年第3四半期のGDP成長率は前期比マイナス0.5%に後退
(スイス)
ジュネーブ発
2025年12月03日
スイス連邦経済省経済事務局(SECO)は11月28日、2025年第3四半期(7~9月)の実質GDP成長率を前期比マイナス0.5%(季節、スポーツイベント調整後、注)と発表した(プレスリリース
、添付資料表1、2参照)。このマイナス成長は、主に化学・医薬品産業によるもので、米国の関税政策に伴う前倒し需要により好調だった輸出が減少に転じたためだとしている。サービス部門の成長率は平均を下回り、工業部門の落ち込みを相殺できなかったとSECOは分析している。
第3四半期のGDP成長率を需要項目別にみると、個人消費は、住宅・エネルギー、医療、宿泊・飲食サービス、通信への支出に支えられ、前期比0.4%増と堅調な伸びを示した。対照的に、政府支出は公共サービスの付加価値の減少(前期比0.6%減)を反映して、前期比0.2%減となった。設備投資も、特にIT投資の低迷により、第2四半期のマイナス成長に続き、0.1%減とわずかに減少したが、研究開発投資は増加した。建設投資も、前四半期に続きマイナス成長となった。全体として、国内最終需要と財・サービスの輸入はわずかに増加した。一方、財輸出は4.2%減と2四半期連続で大幅に減少した。また、サービス輸出は0.1%増とほとんど伸びず、サービス部門の成長率は平均を下回った。そうした中で、金利・手数料取引の増加に牽引され、金融サービスは3.6%増と平均を大幅に上回る成長率を記録した。
産業別にみると、化学・医薬品産業が前期比7.9%減と大きく後退し、GDPを縮小させた。これは、最近の貿易の不安定さが関係しており、米国の貿易政策に伴う第1四半期の前倒し効果もあり、好調だった化学・医薬品製品の輸出がここ数カ月で需要減少に転じた。エネルギー部門の13.9%減という大幅な減少も、夏季の原子力発電所の発電量が低迷したことと関連し、マイナス要因となった。一方、その他の製造業は0.6%増とわずかに増加した。また、個人消費を支えた医療・社会福祉サービス業(0.5%増)、通信(0.8%増)、宿泊・飲食サービス業(1.4%増)はいずれも好調だった。特に宿泊・飲食サービス業は、海外からの来訪者の増加も追い風となった。その他、卸売・小売業、自動車・オートバイ修理も1.6%増加した。しかし、ビジネス関連サービス業は0.6%減と2四半期連続でマイナス成長になった。
(注)全て季節調整値。ただし、「GDP」「サービス輸出・輸入」「芸術・娯楽・レクリエーション業」については、季節調整に加えて、スポーツイベント調整後の数値。
(田中晋)
(スイス)
ビジネス短信 ed8fc00af39af042




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