ベルリン州、防衛技術エコシステム構築を決定
(ドイツ)
ベルリン発
2025年12月17日
ドイツのベルリン州政府は12月2日、防衛技術エコシステムの構築を決定した(プレスリリース
、ドイツ語)。これにより、ベルリンをテクノロジーとイノベーションの拠点として強化し、安全保障・防衛技術の開発の促進を図る。
州政府は、産業界と研究機関のネットワーク強化、当該分野における企業誘致や起業促進を目標に掲げる。実施主体は州の経済振興機関ベルリン・パートナー(2023年12月27日付地域・分析レポート参照)が担い、ベルリン州南東部に位置するドイツ最大級のハイテクパーク「アドラースホーフ科学技術パーク」を運営する州政府公社のWISTAや、州政府傘下のベルリン投資銀行(IBB)が支援する。また、州首相府には、連邦政府やEUとの調整を担うユニットが設置される。
背景には、ロシアによるウクライナ侵攻以降、ドイツ全体が複合的な脅威に直面している状況がある。カイ・ベーグナー州首相は、ベルリンはドイツの首都としてレジリエンスと安全保障分野において特別な責任を担っているとし、そのため、ベルリンに防衛技術エコシステムを構築することが目標と説明した。ベルリン・ブランデンブルク地域には、すでに約130社の安全保障・防衛産業の企業が拠点を置く。さらに、民生用と防衛用の両方に使用できるデュアルユース分野の製品、ソフトウエア、技術を開発している企業が400社以上も立地。地元メディア「rbb24」によると、同分野には約2万6,000人が従事し、売上高は約80億ユーロに達しているという。
フランツィスカ・ギファイ州副首相兼経済・エネルギー・公共企業担当は、防衛技術分野のスタートアップへの投資は増加しており、人工知能(AI)、サイバーセキュリティー、ヘルステック、ドローン技術、光学、フォトニクス、ロボット工学、航空宇宙技術、センサー技術は、極めて革新的な技術分野であり、将来の市場であるとし、今後さらに発展させていくとした。
地元経済界もこの方針を歓迎している。ベルリン商工会議所は、州・連邦・EUの資金によるデュアルユース技術や安全保障・防衛産業への投資は、ベルリンに長期的なイノベーション、成長、雇用を生み出す可能性があるとし、この機会を逃してはならないと強調。さらに、首都としての優位性を生かし、連邦政府、国防省、ドイツ連邦軍、国際パートナーといった需要側を、エコシステムの制度設計段階から組み込む重要性を指摘した。
(中山裕貴)
(ドイツ)
ビジネス短信 da393f145ac54d70




閉じる
