タリク・ラフマン氏が17年ぶりにバングラデシュへ帰国、BNP指導者

(バングラデシュ)

ダッカ発

2025年12月26日

バングラデシュ民族主義党(BNP)のタリク・ラフマン議長代行は12月25日、長年滞在していた英国ロンドンから約17年ぶりにバングラデシュへ帰国した。

ラフマン氏は2007年3月、軍の支援を受ける当時の暫定政府による腐敗・汚職撲滅の一環で逮捕された。2008年9月に保釈を認められた直後に、治療を理由にロンドンへ渡航して以降、同地で暮らしていた。ラフマン氏は、過去に2度首相を務めた母親のカレダ・ジア氏が2018年2月に資金横領を理由に収監されて以降、BNPの議長代行を務めている。なお、ラフマン氏の父親はBNPを結党し1977~1981年に第6代大統領を務めたものの、在任中に45歳の若さで暗殺されたジアウル・ラフマン氏だ。

ラフマン氏は、ハズラット・シャージャラール国際空港から直接向かった歓迎集会において、「われわれは今こそ、共に国家を築く時だ。この国には丘陵地帯と平野部に住む人々、イスラム教徒、ヒンドゥー教徒、仏教徒、キリスト教徒もいる。全ての男女および子供が安全に国を出て帰って来られるようなバングラデシュを築きたい」と語った。また、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の有名な演説に言及しながら、「私には計画がある。それは国を造る計画であり、実行するためには国民全員の協力が必要だ」と訴えた。BNP幹部が前日、「約500万人の支持者がラフマン氏の帰国を歓迎するだろう」と述べていたが、空港周辺や集会場には大勢の人々が集まり、治安当局も厳戒態勢を敷いた。

デーリー・スター紙は、「彼の帰国は分断された政治に均衡を取り戻すきっかけになるかもしれない。演説での『安全なバングラデシュを築く』という約束は最も共感を呼んだ。彼は復讐(ふくしゅう)ではなく、団結を求めた」などと好意的に報じた(12月24日付)。ジャマティ・イスラミ党(JI)のショフィクル・ラフマン党首は「家族と共にお帰りなさい」とフェイスブックに投稿した。国民市民党(NCP)のナヒッド・イスラム党首も帰国を歓迎し、「これから多党制民主主義の実践がさらに強化されると確信している。タリク・ラフマン氏の政治参加は民主的な未来をかたち作る上で意義深いものとなる」と述べ、期待を示した。

ラフマン氏は歓迎集会に出席した後、健康状態が懸念されている母親のカレダ・ジア氏が入院する病院へ駆けつけた。翌26日は、父親のジアウル・ラフマン氏の墓を訪れる予定。ラフマン氏の帰国が総選挙の動向へ与える影響に注目が集まる。

(片岡一生)

(バングラデシュ)

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