第3四半期の失業率は6.6%で改善も非正規雇用が増加、労働改革への反対の動きも
(アルゼンチン)
ブエノスアイレス発
2025年12月25日
アルゼンチン国家統計センサス局(INDEC)は12月16日、2025年第3四半期(7~9月)の国内31の都市圏を対象とした世帯アンケート(EPH)に基づく労働力調査
の結果を発表した。それによると、2025年第3四半期の完全失業率は6.6%で、前年同期比0.3ポイント減、前期比で1.0ポイント減少した(添付資料表参照)。
就業人口は全人口の45.4%で、前年同期比0.4ポイント、前期比で0.9ポイント増加した。しかし、INDECによると、社会保障制度に登録されておらず、労働法の保護を受けていない状態で働いている雇用者数の就業人口に占める割合、すなわち非正規雇用率は43.3%で、前年同期比0.7ポイント、前期比0.1ポイント増加した。就業人口の71.9%は給与所得者で、前年同期比1.2ポイント減、前期比0.5ポイント減と減少する一方、自営業者は24.5%と、前年同期比1.2ポイント、前期比0.8ポイント増加した。
性別・年齢階層別での完全失業率をみると、14~29歳までの男性の完全失業率は11.7%と高かったが、前期比で1.0ポイント減、同世代の女性は12.7%で、前期比4.2ポイントの大幅減となった。
シンクタンクのアルゼンチン政治経済センター(CEPA)が公表した2025年12月19日付報告書によると、「失業率や就業率にわずかな改善がみられる一方で、労働の質が全般的に悪化する状況が進行している。労働市場で矛盾した動きがみられる」と分析した。CEPAは、労働の質の悪化は、非正規雇用の増加だけでなく、社会保障などの保護を受けない自営業者が増えていることを意味している。失業率の減少については、「質の高い雇用機会が不足していることに対して失望感を示し、就職をあきらめた人が増えている可能性がある」とも分析している。
アルゼンチン政府は、労働法の改革法案を既に議会に提出しており、2026年2月以降に審議される予定だ。同法案は、労働法の近代化と民間部門における新規雇用の創出を目指している。改革の主な内容は、解雇補償金の計算方法の見直し(休暇手当や賞与を含まないなど)、補償金の分割払いを認める、外貨での賃金の支払いを認める、1日の労働時間を8時間から12時間へ延長することを可能にする労働時間配分の新たな仕組みを導入する、休暇の分割取得を認める、組合非加入の労働者による組合費拠出を廃止する、など。労働組合の全国連合組織である労働総同盟(CGT)はこれらの改革案に反対しており、2025年12月18日に抗議デモを実施した。今後、ゼネスト実施の可能性も示唆している。
労働改革に反対する張り紙(ブエノスアイレス市内)(ジェトロ撮影)
(山木シルビア)
(アルゼンチン)
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