ブラジル中銀、政策金利を4会合連続で15%に据え置き
(ブラジル)
サンパウロ発
2025年12月19日
ブラジル中央銀行は12月10日、金融政策委員会(Copom)を開催し、政策金利(Selic)を15%に据え置くことを全会一致で決定した。据え置きは4会合連続で、市場の予測どおりだった。中銀の声明では、高金利を据え置く背景として、米国の経済政策を巡る外部環境の不確実性が懸念材料として挙げられている。国内経済については、経済活動の鈍化が進む一方、労働市場は堅調に推移しており、インフレ目標の達成(注1)には、引き続き長期的な金融引き締めが必要との見解を示した。
12月16日に公表された同会合の議事要旨では、財政規律の緩和や構造改革の停滞が経済の中立金利を押し上げ、金融政策の効果を弱めるリスクにあらためて懸念が表明された。その上で、インフレ目標の達成には、現在の金利水準を「かなり長期にわたり」維持する戦略が適切との結論を再確認した。
今回の決定に対し、産業界からは賛否両論の声が上がった。全国工業連盟(CNI)は声明で、「経済減速やインフレ率の低下は政策転換の理由になる」と述べ、高金利の維持を批判した。一方、サンパウロ州商業連盟(Fecomercio SP)は「拙速な利下げは信頼性を損なう恐れがある」とし、中銀の慎重な姿勢を支持した。
ブラジル銀行連盟(FEBRABAN)は、「今回の中銀声明をみると、利下げの示唆はなく、2026年1月の引き下げ予想は後退した」とコメントした。12月11日付の現地紙「フォーリャ」によると、市場では、利下げ開始時期は2026年1月あるいは3月になるとみている。
12月5日付の中銀週次レポート「フォーカス」(注2)によれば、2025年の拡大消費者物価指数(IPCA、注3)上昇率予測は4.4%で、中銀のインフレ目標範囲(1.5~4.5%)内に収まっている。ただし、現地経済誌「ベ―ジャ」(11月16日付)は、インフレ率が目標中央値(3%)に近づかない限り利下げは始まらないとの見方が広がっている、と報じた。
(注1)2025年の中銀のインフレ目標値は、1.5~4.5%。
(注2)フォーカスは、中銀が国内100以上の金融機関を対象に行ったアンケートを集計し、予測などをまとめたもの。毎週金曜日に集計を行って平均値を算出し、翌週の月曜日に公表する。
(注3)ブラジルの代表的な物価指数。
(エルナニ・オダ)
(ブラジル)
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