中東進出日系企業調査、注目国のサウジアラビアで黒字企業割合が増加
(中東、サウジアラビア)
調査部中東アフリカ課
2025年12月22日
ジェトロは12月11日、「2025年度 海外進出日系企業実態調査(中東編)」を発表した。中東8カ国に進出する日系企業206社に対して、現地での活動実態に関するアンケート調査を2025年9月1~22日に実施し、取りまとめたもの(8カ国、177社から有効回答)。
中東進出済みの日系企業の今後の注目国(複数回答可)は、前年から引き続きサウジアラビアが最多で前年比6.4ポイント増の76.0%だった。49.4%でアラブ首長国連邦(UAE)、25.3%でエジプトが続いた。
また、サウジアラビアに進出する日系企業が、今後1~2年の事業展開について「拡大」すると答えた割合は53.8%だ。さらに、2025年の営業利益見込みが黒字と回答した企業の割合は、前年比15.0ポイント増の75.0%で、中東全体の73.8%、世界全体の66.5%と比べても高い水準だった。日系企業の38.5%は、現地従業員数が過去1年で「増加した」と回答した。
サウジアラビアの魅力は市場規模や成長性
サウジアラビアの投資環境面での魅力(複数回答可)としては「市場規模、成長性」が最も多い88.0%で、「安定した政治・社会情勢」が16.0%で続いた。有望視するビジネス分野(複数回答可)は、資源・エネルギーが43.5%、新産業が39.1%、インフラ、消費市場、サービス業がそれぞれ34.8%だった。資源・エネルギーの内訳では、石油、再エネ(太陽光)、水素、炭素回収が同率首位となった。なお、炭素回収は前年比19.2ポイント増だった。
インフラの内訳をみると、「水」が最多で、都市開発、鉄道、空港などの回答が同率2位だった。国土の大半が砂漠のため、海水淡水化事業が重要であるほか、都市開発の上下水道の整備などのニーズもある。
人件費の高騰などの課題も
サウジアラビアにおける投資環境面での課題(複数回答可)は、「法制度の未整備・不透明性」が52.0%で最も多かった。「人件費の高騰」「労働力不足・人材採用が困難」が続いた。人材獲得を巡る動きについて聞いたところ、サウジアラビアでは「悪化」が4割と中東諸国の中で最も高い。さらに、「地場企業」と人材獲得において競争が激化しているとの回答が44.0%と高かった(中東全体では23.7%)。
サウジアラビアの日系企業において、政治・外交的な動きが企業活動に「大いに影響がある」「やや影響がある」との回答は合計96.0%だった。特に紅海でのフーシ派による船舶攻撃(75.0%)やイスラエルとハマスの衝突(62.5%)を挙げた企業が多い。一方、「米国ドナルド・トランプ政権」が活動に影響を与えたとの回答は、16.7%にとどまった。
(井澤壌士)
(中東、サウジアラビア)
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