中東進出日系企業、米国追加関税の影響は少ないものの、地政学的影響は続く
(中東、アラブ首長国連邦、トルコ、サウジアラビア、ヨルダン、イスラエル、クウェート、カタール、バーレーン、米国、日本)
調査部中東アフリカ課
2025年12月11日
ジェトロは12月11日、「2025年度 海外進出日系企業実態調査(中東編)」を発表した。中東8カ国に進出する日系企業206社に対して、現地での活動実態に関するアンケート調査を2025年9月1~22日に実施し、取りまとめたもの(8カ国、177社から有効回答)。
引き続きイスラエル・ハマスの衝突やフーシ派による攻撃が企業活動に影響
政治・外交的な動きが企業活動に与える影響については、「大いに影響がある」「やや影響がある」の回答合計が89.0%で、前回から微増した。前回に引き続き、「イスラエルとハマスの衝突」や「紅海でのフーシ派による船舶攻撃」を挙げた企業が多く、具体的影響としては、営業活動の制限、輸送日数やコストの増加、サプライチェーンの混乱などが挙がった。また、国別にみると、トルコでは「ロシアによるウクライナ侵攻」が影響を与えていると回答した企業が多かった。
米国の追加関税措置などは、中東全体で「影響はない」が最多
今回の調査では、新たに米国の追加関税措置(注)に関する設問を設定した。調査時点での米国とのビジネス状況については、中東全体の約7割の企業が米国との取引がなく、米国からの直接輸入と米国への直接輸出と回答した企業がそれぞれ1割程度だった。
2025年の営業利益への影響については、中東全体で「影響はない」と回答した企業が53.1%と最多で、世界全体での割合(37.8%)を上回った。また、「現時点ではわからない」と回答した企業も36.0%にのぼった。国別にみると、サウジアラビアでは「影響はない」と回答した企業が65.4%と多かった一方、トルコでは「マイナスの影響が大きい」と回答した企業が14.8%で中東8カ国の中で最も多かった。
具体的なマイナスの影響としては、「米国市場での需要減少」と「調達・輸入コストの増大」が最も多かった。また、米国の追加関税措置への対応策については、47.6%の企業が「特になし」と回答した。具体的な対応策としては、「調達先の分散化」と「自社におけるコスト削減」が多かった。なお、「マイナスの影響が大きい」と回答した企業では、「自社におけるコスト削減」に次いで、「現地市場での販売を増加」を対応策として挙げた企業が多かった。
(注)2025年8月15日までに導入された米国の第2期ドナルド・トランプ政権による関税引き上げ措置、所在国・地域および第三国・地域の報復関税措置などを指す。
(加藤皓人)
(中東、アラブ首長国連邦、トルコ、サウジアラビア、ヨルダン、イスラエル、クウェート、カタール、バーレーン、米国、日本)
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