米エネルギー省、増大するAI電力需要に対する小型原子炉の研究パートナーとしてアリゾナ州立大学など選定

(米国)

ロサンゼルス発

2025年12月17日

米国エネルギー省(DOE)は12月9日、先端マイクロリアクター(小型原子炉)技術の応用研究検証評価(MARVEL)プログラムにおいて、アリゾナ州立大学(ASU)とデータセンター関連企業のDCX(注)を主要な研究パートナーとして選定したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ASUとDCXの共同研究チームは、人工知能(AI)や高性能コンピューティングによって増大する電力需要に対して、小型モジュール式原子炉が信頼性の高いエネルギー供給を提供できるかどうかを共同で研究し、AI分野における米国の競争力強化を目指している。

データセンターは最もエネルギー消費量の多いコンピューティング施設の1つとされ、今後数年間で、米国の総電力消費量の最大8分の1を消費すると予測されており、これはカリフォルニア州とテキサス州の現在の電力使用量を合わせた量に相当する。増大するAI需要に対応するためにエネルギー供給を拡大するとともに、エネルギーの安全性、信頼性、低コストを確保することは、米国の安全保障とAI分野におけるリーダーシップにとって不可欠とされる。

共同研究チームは、小型原子炉と電力網の相互作用、AI負荷のモデリング、熱電変換システムの最適化に関する評価を実施し、研究結果は小型原子炉がデータセンターに直接電力を供給する方法を探るのに資するという。従来の電力網への依存度を軽減し、遠隔地やインフラが限られた環境でのAIコンピューティングの展開を可能にし、持続的にカーボンフリーの電力源を提供することが可能となる。

公立校で全米最多の学生数を誇り、工学部の規模も最大のASUは「変化するエネルギーの未来における課題を解決するためには、これまで以上に協力的で積極的なイノベーションが必要」とコメントしている。また、DCXは「データセンターは私たちのデジタル未来の基盤であり、必要なエネルギーは指数関数的に増加している。この取り組みは、米国で構築される主権的で強靭(きょうじん)かつ無限に拡張可能なAI能力の基盤を築くもの」と述べている。

(注)米国アリゾナ州スコッツデールに本社を置くエネルギーソリューション企業。2021年設立。マイクロリアクター技術などを活用し、AIデータセンター向けに安定的な電力供給ソリューションを開発中。

(堀永卓弘)

(米国)

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