中国新興EVの理想汽車、海外販売網の展開進める

(中国、エジプト、カザフスタン、アゼルバイジャン、ウズベキスタン)

北京発

2025年12月22日

米国ナスダックおよび香港証券取引所上場の中国新興電気自動車(EV)の理想汽車(Li Auto)は12月17日、エジプト、カザフスタン、アゼルバイジャンへの販売拠点設置をSNSの自社アカウントなどで発表した(注1)。理想汽車は10月に、初の海外販売拠点をウズベキスタンのタシケントに設置していた。ウズベキスタン市場への参入に続き、中央アジア、コーカサス地域、アフリカにまたがる中核市場への進出を行ったことで、グローバル化に向けたプロセスが実質的に実行段階に入った、と今回の発表で述べている。

今回の進出では、主力モデルとする理想L9、理想L7、理想L6の3車種を同時に投入すると発表した。理想汽車は、エジプト、アゼルバイジャン、カザフスタン、ウズベキスタンでは新エネルギー車の普及が推進されているものの、現地の充電インフラは整備が進められている段階にある、と指摘している。このような状況を踏まえ、ガソリンと電気の双方のエネルギーを活用できるレンジエクステンダー車(注2)である理想Lシリーズを導入したとしている。

理想汽車は、グローバル戦略において「正規ディーラーモデル+総代理店モデル+現地法人運営モデル」を並行する多元的展開を採用し、各市場に応じた対応をとっていると説明した。また、海外ユーザーに対する公式保証、アフターサービス、継続的なOTA(注3)によるアップグレードサービスを提供するとしている。

理想汽車が11月26日に発表した2025年第3四半期決算報告では、1~9月の納車台数は前年同期比13.1%減の29万7,149台、車両販売売上高は17.2%減の794億3,080万元(約1兆7,475億円、1元=約22円)と減少が続いており、純利益は75.2%減の11億1,910万元だった。

同社の李鉄最高財務責任者(CFO)は2025年第3四半期報告において、「激化する市場競争の中、第3四半期はサプライチェーンにおけるボトルネックや、理想MEGA〔理想汽車の大型多目的車(MPV)〕のリコールで発生した追加費用という逆風に直面した。サプライチェーンパートナーと積極的に連携し、ユーザーニーズに応えられるよう取り組んでいる。理想MEGAのリコールで推定されるコストを除くと、粗利率は20.4%となり、継続的な事業の回復力を示している」と述べている。

(注1)12月8日にアゼルバイジャンの首都バクー、12月10~11日にカザフスタンの首都アスタナとアルマトイに販売拠点を開設したと発表している。

(注2)レンジエクステンダーとは、電気自動車(EV)の航続距離延長を目的に搭載される小型発電機からなるシステムを指す。

(注3)OTAはOver The Airの略で、無線ネットワークを利用した通信をいう。

(亀山達也)

(中国、エジプト、カザフスタン、アゼルバイジャン、ウズベキスタン)

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