ジェトロと経済産業省、日韓国交正常化60周年記念「日韓の地域エコシステム連携シンポジウム」開催
(韓国)
ソウル発
2025年12月16日
韓国・ソウル特別市のCOEX(展示場)で12月10日、韓国最大規模のスタートアップイベント「COMEUP(カムアップ)」(注1)が開催された。それにあわせ、ジェトロと経済産業省は「日韓の地域エコシステム連携シンポジウム」を開催した。本シンポジウムは、日韓国交正常化60周年を記念して日本と韓国の地域におけるスタートアップ・エコシステムの連携を進めることを目的とし、韓国の創造経済革新センター(CCEI)(注2)協議会も協力した。地域のエコシステム交流を図るためのこのようなイベントをジェトロと経済産業省が主催するのは初めて。
本シンポジウムの冒頭では、主催者を代表してジェトロの高島大浩理事があいさつした後、韓国中小ベンチャー企業部のチョ・ギョンウォン創業政策官が祝辞を述べた。続くトークセッションには、高島理事のほか、済州道CCEIのイ・ビョンソン代表、国際的なアクセラレータである01(ゼロワン)ブースターの川島健理事、韓国のアクセラレータ兼ベンチャーキャピタル(VC)のTAP(タップ)エンジェルパートナーズのジン・サンフン理事がパネリストとして参加し、モデレーターはジェトロ・ソウル事務所の前川直行所長が務めた。
トークセッションにおいて、済州道CCEIのイ・ビョンソン代表は、日韓間の連携について日韓双方から期待感が高まっていることを踏まえ「テック企業の育成だけでなく、地方の特色となる特産品やお土産など地域のライフスタイルやブランドを基盤としたスタートアップを育成することも地域のエコシステムの重要な役割だ。日本には、地域に根差した大企業が存在しており、経済基盤が強い。こうした日本の地域と直接結びつくことで大きなシナジーを生み出すことができる」との見解が示された。
01(ゼロワン)ブースターの川島理事からは「エコシステムに投資するからにはリターンが求められる。地域の人は地域のことを良く知っているが、データ化されていないケースが多い。今後、投資家目線での情報発信が求められる」と地域の課題が挙げられた。その一方で、「今後、日本側のエコシステム拠点都市が増えるため、地域の動きがより活発になる」との期待感も示された。
TAPエンジェルパートナーズのジン・サンフン理事から、「日韓ともに首都圏への一極集中の問題がある。地域は知名度が低いので、産業を特化するなど取捨選択することが重要だ。またワーケーションを促進したり、人材不足に悩む日本と就業機会が少ない韓国の学生の間での人材マッチングを進めたりすることが、交流を深めていくための手段として有効だ」と、具体的な交流の手段について言及があった。
ジェトロの高島理事は、「地域間の交流として姉妹都市は基本的に1対1だが、エコシステムの交流は複数地域同士の交流を維持しながら日韓にまたがるコンソーシアムを面的に拡大させることが可能。人口減少が続く日韓は、連携により競争力を高めていく必要がある。日韓の地域エコシステムの連携から経済連携につながることを期待」とエコシステム交流への期待を述べた。
最後の地域エコシステムの紹介セッションでは、日本からは、福岡市(Fukuoka Growth Next)、神奈川県、沖縄県、静岡県、宮城県、札幌市、下関市が登壇し、エコシステムの特徴や韓国との交流事例などを紹介した。韓国からは、釜山と済州のCCEIがエコシステムの特徴および日本との交流事例などを紹介した。京都(府と市のコンソーシアム)、名古屋市、仙台市は、広報デスクを設営して韓国側との交流を図った。会場には、ソウル、釜山、大田、世宗、大邱、蔚山、慶尚南道のCCEIの代表者も参加し、エコシステム同士の積極的な交流が行われた。
(注1)韓国最大規模のスタートアップイベントで、毎年12月にソウルで開催される。中小ベンチャー企業部が主催し、韓国の創業振興院(KISED)、Korea StartUp Forum、韓国ベンチャーキャピタル協会(KVCA)、韓国ベンチャービジネス協会(KOVA)などが主幹団体。2024年は45カ国から260社のスタートアップが出展(うち海外150社)した。
(注2)創造経済革新センター(CCEI)は、朴槿恵(パク・クネ)政権時代に中央政府と自治体、財閥企業が協力し、スタートアップの育成や海外展開を支援する機関として全国17カ所(現19カ所)に設立された。
(前川直行)
(韓国)
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