ドイツ南西部でリチウム採掘プロジェクトが始動、オーストラリア企業バルカン・エナジーが主導
(ドイツ、オーストラリア)
デュッセルドルフ発
2025年12月18日
オーストラリアの地熱エネルギー開発企業バルカン・エナジー(Vulcan Energy)は12月3日、ドイツ南西部のライン川上流域でのリチウム採掘プロジェクトに約22億ユーロ規模の資金を調達したと発表した(プレスリリース
、ドイツ語)。
同プロジェクトは、年間最大2万4,000トンの水酸化リチウム一水和物の生産を見込んでおり、これは電気自動車約50万台分のバッテリー製造に必要な量のリチウムを生産できる規模に相当する。加えて、リチウム採掘に付随して生成される年間で最大 275 ギガワット時(GWh)の電力と560GWhの再生可能熱エネルギーを、ラインラント・プファルツ州内の一般家庭に供給することも計画されている。地熱とリチウム原料の抽出を行うプラントはドイツ南西部のランダウ市に、抽出された原料からリチウムの加工を行うプラントはその北に位置するフランクフルト市に建設される予定。
22億ユーロの資金は、欧州投資銀行(EIB)を含む大手商業銀行などから提供される融資(11億8,500万ユーロ)、バルカン・エナジーの産業パートナー企業からの投資(1億3,300万ユーロ)、ならびにバルカン・エナジーの自己資本(5億2,800万ユーロ)に加え、連邦経済・エネルギー省やラインラント・プファルツ州政府、ヘッセン州政府から拠出された助成金(2億400万ユーロ)、ドイツ復興金融公庫(KfW)の「資源基金(Rohstofffond)
」からの株式投資(1億5,000万ユーロ)で構成されている。特にKfWからの資金は、2024年の同基金設立以来初の投資案件であり、ドイツでの資源およびエネルギーの安定供給に向けた重要なマイルストーンとされる。
2025年11月25日に開かれた産業界との会合で、カテリーナ・ライヒェ経済・エネルギー相は、信頼性が高く、多様かつ持続可能な資源供給が産業の強靭(きょうじん)化には不可欠とし、国際的なパートナーシップの拡充と国内での近代的な資源開発、社会による受容の重要性を強調。本プロジェクトに関しては、「気候目標の達成および産業の脱炭素化への取り組みに大いに寄与するものだ」と述べている。
(マリナ・プタキドウ、櫻澤健吾)
(ドイツ、オーストラリア)
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