国連「ビジネスと人権フォーラム」開催、人権尊重の取り組み加速へ
(スイス、世界、日本)
調査部欧州課
2025年12月11日
第14回国連ビジネスと人権フォーラム
が11月24~26日、ジュネーブで開催された。2025年の全体テーマは「危機と変革の時代に、ビジネスと人権の取り組みを加速させる」。オンライン参加も含め146カ国から4,650人の多様なステークホルダーが一堂に会し、国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)の実践と推進における主要な動向と課題に係るセッションが行われた。最多参加層はNGOなどの市民社会組織で、企業からの参加者も27%を占めた。先住民族コミュニティーの代表者も登壇した。
3日間で25を超えるプログラムでは、「People Centered Approach(人々を中心に据えたアプローチ)」をキーワードに、強制労働のリスクが高い移民労働者に対する企業責任、公正な雇用や、プラットフォーム・エコノミー(注1)の隆盛によって誕生したギグワーカー(注2)の窮状などが扱われた。「プロアクティブ」(リスクを予測し未然に防ぐ対策を取る姿勢)もキーワードとなった。
「グリーバンス・メカニズムの中心にいる労働者と救済
」というセッションでは、救済へのアクセスを確保するグリーバンス・メカニズム(注3)の中心に労働者がおかれるべきで、労働者の声に耳を傾けることが第一歩であり、また、グリーバンス・メカニズムがあることにより、申し立てを受ける側と労働者側の信頼関係が育まれるという見解が示された。
アセンブリーホールで開催されたセッション(ジェトロ撮影)
日本からも、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン
(注4)の会員企業など、企業のサステナビリティ担当者や法曹関係者などが多数参加し、企業の人権デューディリジェンスを支援するツールを開発したスタートアップも登壇
した。
同フォーラムのアーカイブ動画は、国連ウェブサイト
で視聴可能だ。2026年の開催日程は未公表だが、同フォーラムは例年11月最終週にジュネーブで開催される予定とのこと。
(注1)デジタルプラットフォームを通じて、労働の成果物やサービスの提供を行うもの。
(注2)デジタルプラットフォームを通じて、単発の仕事を請け負う人。
(注3)企業活動において人権侵害が発生した場合に、被害者が苦情を申し立て、適切な救済にアクセスすることができる仕組み。UNGPsに基づくもの。
(注4)「国連グローバル・コンパクト」の日本の国内ネットワーク。同組織は、国連が提唱する世界最大の企業サステナビリティ・イニシアチブで、企業や団体が責任ある経営を通じて持続可能な社会に貢献することを目指している。
(冨岡亜矢子、川嶋康子)
(スイス、世界、日本)
ビジネス短信 b4ab451fed49e1a1




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