スペイン、アフリカ豚熱発生、欧州と中国は感染地域のみ輸入停止

(スペイン)

マドリード発

2025年12月08日

スペイン農業・漁業・食料省(以下、農業省)は11月28日、バルセロナ市郊外の山地で発見された野生イノシシの死骸からアフリカ豚熱(ASF、注)の陽性反応が出たと発表した。12月4日現在で陽性反応の個体数は合計13頭。すべて同地域内の事例で、感染区域内の養豚場で感染例は出ていない。

カタルーニャ州政府は発生確認直後より農業省と協力し、感染確認地点から半径6キロメートル圏内を封鎖した。また、半径20キロメートル圏内を監視区域としてレジャー活動を禁止。警察や軍が感染地域への出入りの管理や通行車両の消毒、個体の回収や捕獲にあたっている。

感染源は不明だが、同州農業長官が「汚染された食品経由の可能性」を指摘した。隣国フランスでは感染例がないことから、「他の欧州諸国から長距離輸送などを通じて持ち込まれた」(12月4日付「ABC」紙)との見方がある。

スペインでの感染例は、1994年11月以来31年ぶり。ASFは2014年からEU域内で発生しており、現時点で、13カ国で家畜豚への感染例がみられる。ASFは人に感染することはないが、感染拡大による畜産業界への影響が甚大であることから直ちに撲滅措置が実施される。

スペインは、2024年は世界3位、またEU最大の豚肉生産国で、域内生産の24.1%を占める。カタルーニャ州は、スペインの豚飼養頭数の約23%を占める重要生産地の1つ。今回のASF発生を受け、各国がスペイン産豚肉の輸入制限措置を講じた。農業・畜産協同組合連合(COAG)によると、12月1日時点で日本(農林水産省プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)や台湾、米国、メキシコなど19カ国・地域が輸入を全面停止しており、農業省が個別に輸入条件緩和の交渉を続けている。

EUのほか、韓国や英国などの域外国の一部では、疾病発生国であっても未発生地域からの輸入を可能とする「地域主義」を適用しており、基本的にバルセロナ以外の地域は影響を受けない。12月4日に欧州委員会が輸出制限対象の感染地域をバルセロナ県内の一部自治体のみに限定したことで、同県内でも感染確認地点から遠い主要生産地の輸出は当面認められるかたちとなった。中国は、11月中旬にスペイン国王夫妻が同国を公式訪問した際にASFに関する「地域主義」の相互認証協定が締結・発効していたことから、同県産以外の豚肉については引き続き輸出が可能となり、国内豚肉業界に一応の安堵(あんど)感を与えた。

2024年のスペインの豚肉・加工品の輸出額は87億8460万ユーロに達した。日本にとってもスペインは冷凍豚肉の最大調達先で、2024年は17万トンを占めた。輸入一時停止措置が続けば、大幅なサプライチェーン変更が必要となる。

(注)アフリカ豚熱(ASF)に関する注意事項については、農林水産省ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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