タミル・ナドゥ州投資会議で覚書締結、総額4,384億ルピーの158件
(インド)
チェンナイ発
2025年12月08日
インド南部タミル・ナドゥ(TN)州政府は11月25日、投資会議「TN Rising Investment Conclave」の第3回を州西部コインバトールで開催した。M・K・スターリン州首相をはじめ、T・R・Bラジャア州工業相ら州政府閣僚が出席し、国内外の企業との間で全158件の投資覚書(MOU)を締結した。総額4,384億4,000万ルピー(約7,453億円、1ルピー=約1.7円)に及ぶ投資は、10万人を超える雇用が創出される見込みだ。
主要なMOU締結企業には、シンガポール系データセンター企業STTグローバル・データセンターズ(投資額420億ルピー)、地場エレクトロニクス企業キャリバー・インターコネクツ(300億ルピー)のほか、地場ポンプ製造CRIポンプス(206億ルピー)や機械製造LMWグループ(105億ルピー)などがある。さらに、自動車分野では、香港のジョンソン・エレクトリックによるPMDC(注1)モーター製造への約130億ルピーの投資、韓国の現代Wiaによる電動四輪駆動車(コンセプトカー)用ドライブトレイン(注2)部品工場への129億ルピーの投資があり、医療技術分野では、テルス・ヘルスケアが125億ルピーを投じる新施設建設などがある(添付資料表参照)。
同会議であいさつしたスターリン州首相は「TN州において覚書を締結した企業のうち、80%が投資を始めている」と強調した。また、「外資誘致活動では、ベトナムやタイなどと競合している」と述べ、生産拠点の分散など世界的なサプライチェーンの見直しを念頭に置いた取り組みを進めていることを示唆した。ラジャア州工業相は、コインバトールを「未来志向の産業・イノベーション拠点」とする州政府の戦略を示し、先進エレクトロニクスや航空宇宙・防衛分野への投資誘致を通じて、TN州の産業構造の高度化をめざすと述べた。さらに、「チェンナイ一極集中から、コインバトールを含むティア2、ティア3の各都市に投資を誘導し、州全体でバランスの取れた成長を実現するために、分散型成長の推進を通じて州の持続的成長を目指す」と訴えた。
コインバトールは、インドの中でも早くから繊維産業が集積し発展したことから「南インドのマンチェスター」と呼ばれる一方、「ポンプシティー」とも呼ばれ、多くのポンプとモーターが生産されている。今回の投資会議では、ポンプ製造業の振興策として、「高度なポンプとモーターの開発」および「鋳造技術開発」の専門センター設立を表明した。また、コインバトールは現在、25以上のグローバル・ケイパビリティー・センター(GCC)(注3)が拠点を置き(ラジャ工業相)、IT企業の進出拡大や地元発スタートアップ企業が生まれており、産業ハブから新しい産業を誘致する総合的なエコシステムへと変貌を遂げようとしている。
投資会議の様子(ジェトロ撮影)
(注1)PMDCはPermanent Magnetic DC(直流)。
(注2)ドライブトレインは動力伝達装置。
(注3)グローバル・ケイパビリティー・センターとは、企業のITサービス、エンジニアリング、研究開発などの機能を担うグローバルな拠点を指す。
(藤井芳彦)
(インド)
ビジネス短信 a27e6aa41f9073a1




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