四川省、重慶市が次期5カ年計画に関する建議を発表

(中国)

成都発

2025年12月24日

中国共産党四川省委員会は11月27日、重慶市委員会は11月25日、それぞれの省・市の「国民経済と社会発展の第15次5カ年規画(2026~2030年)」の制定に関する建議を発表した。示された主な方針は次のとおり。

〇産業:四川省は、同省の特色と優位性を有する現代化産業システムの構築を図るとの方針を示した。酒造、絹織物などの伝統的製造業の質の高い発展を推進する。また、製造業における「スマート化・データ化」行動と人工知能(AI)を活用した新型工業化行動を高度に展開する。また、バイオ医薬、新型ディスプレー、集積回路(IC)、AI、低空経済、新エネルギー、新素材、インテリジェント・コネクテッド・ビークル(ICV)などの新興産業の発展を加速、推進する。重慶市は、「産業頭脳・未来工場」という新しいモデルを活用し、「33618」現代製造業クラスター(注1)体系のアップグレードを図るとし、国際的なICV産業クラスターの構築および「重慶製」の認知度向上の推進などを掲げた。

〇地域発展:四川省は、協調的な地域発展に向けた新たな仕組みを構築する方針を示した。成都・重慶地区双城経済圏(注2、以下、成渝経済圏)の総合的な競争力の強化や5区共興(注3)、県域経済の発展を推進するとした。重慶市は、成渝経済圏の発展を強調し、重要な経済センター、科学技術イノベーションセンターを形成し、西部金融センターを共同で構築するほか、文化・観光面での連携プロジェクトも推進するとしている。

〇内需拡大:四川省、重慶市とも、国際消費都市の建設を推進する方針を示した。四川省は、消費振興特別行動として「5大工程」(注4)を推進し、消費ブランド「蜀里安逸」(注5)の構築を図る。重慶市は、消費分野における分野横断的な融合を推進するとともに、「眠らない重慶」「美食の都」などの消費ブランドの強化を進める。

〇対外戦略:四川省は、西方への開放戦略拠点および国際競争に参画する新たな基地の建設を進める方針を示した。うち、成都市については、全方位型のゲートウェイ複合型国際航空ハブの構築を支援し、国際道路輸送の集積・分配拠点として四川集結センターの建設を強化するほか、長江上流の港運拠点の形成を同市と共同で推進する。一方、重慶市では、西部陸海新通道(注6)の牽引力を強化し、ユーラシア経済回廊を結ぶ戦略的ハブの構築‌を推進する。また「産業クラスター・物流ハブ・回廊共築」の新たなモデルを構築し、ハブ港産業パークを核とするハブ経済区の形成を推進するとした。

(注1)重慶市政府は2023年6月5日に開催した「製造業の質の高い発展を推進する大会」において、「33618」現代製造業クラスター政策を打ち出した。同政策では、ICV、次世代電子情報製造業、先進材料を3つの主導産業クラスターとして構築するとしたほか、スマート設備・製造、食品・農産品加工、ソフトウエア情報サービスの3つの支柱産業クラスターの高度化、新型ディスプレー、バイオ・医薬など6つの特色・優位性産業クラスターのイノベーション推進、衛星インターネット、バイオ製造など18の「新星」産業クラスターの育成を推進するとした。

(注2)2021年10月に中国共産党中央委員会と国務院が、新たな経済圏構想として成渝経済圏の建設規画綱要を発表。同経済圏は、重慶市の27区(県)と一部地域、四川省の省都である成都市、自貢市など15市から構成される。

(注3)四川省政府は2022年11月に、成都平原、四川省南部、四川省東北部、四川省西南部(攀枝花市、涼山州)と四川西北部の5地域の共同発展を提起した。

(注4)四川省では、時期や分野ごとに「5大工程」と呼ばれる重点事業を実施してきた。本稿で言及する「5大工程」は、商品消費の高度化、サービス消費の質の向上、新しい消費形態の活用、消費シーンの革新、経営主体の育成を指している。

(注5)四川省政府は2023年3月に、国際的な消費拠点を構築するため、世界市場、国内市場への訴求力と四川省・重慶市の特色を併せ持つ消費ブランド「蜀里安逸」の育成を打ち出した。

(注6)主要ルートは、重慶市から貴州省、広西チワン族自治区を経由して、東南アジアへ至るルートと、重慶市から雲南省を経由して、東南アジアへ至るルートがある。その他、重慶市から湖南省を経由するルートや、成都市を起点とするルートもある。

(曾小桐)

(中国)

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