ソウル市が「グローバルタレント戦略フォーラム」を初めて開催、人材定着に課題

(韓国)

知的資産部高度外国人材課

2025年12月19日

韓国のソウル市は12月10日、「グローバルタレント戦略フォーラム」を開催した。企業、行政機関、教育機関などの関係者や学生など約150人が参加した。ソウル市は、最新(2026年版)の「QSベスト学生都市ランキング」(注1、添付資料表参照)でロンドンや東京を抑えてはじめて1位を獲得するなど、外国人材の誘致と定着に注力しており、今回のフォーラムもその一環として初めて開催された。

基調講演として、産業政策研究院の趙東成(チョ・ドンソン)理事長は、ソウルのグローバル人材誘致の現状と課題について言及した。ソウルの強みとして、世界最高水準の公共交通機関と安全性、情報通信エコシステム、豊富な文化コンテンツの蓄積、産業・技術・研究開発拠点の集積を挙げた。一方で、弱点と課題として、高い住宅費、インターナショナルスクールや英語による行政・医療・公共サービス不足、ビザと行政手続きの複雑さ、外国人コミュニティの不足などを指摘し、これらによりソウルを「人材を定着させるのは難しい都市」だと指摘した。

QS社のJoroen Prinsenアジア太平洋地域統括常務理事は、「QSベスト学生都市ランキング」の結果をもとに、ソウル市の大学は学生の多様性を向上させてきているが、留学生教員比率や国際研究ネットワークには改善の余地があると述べた。2030年には、韓国が日本を抜き、東アジアにおいて留学生受け入れ国として、中国に次いで2番手になるとの予測を示した。

パネルディスカッションに参加したジェトロ高度外国人材課の吉田悠吾課長は、グローバル人材の育成について、「日本では学生、とりわけ留学生に対するキャリア支援がまだ不足しており、産業界とつなげる大学の機能も足りていないが、ソウルでも同じような問題があるのではないか」と、大学におけるキャリア支援の重要性と大学が果たすべき役割を指摘した。

続いて、「外国人材採用で企業が直面する課題と現場の声」と題したセッションにおいて、外国人材の韓国就業支援プラットフォームを運営するKOWORKのキム・ジンヨン代表が登壇した。キム氏は、「韓国では、外国人の在留資格の申請書類が20種類に及び、わかりにくい」「E7ビザ(注2)申請において、50年前に作成された産業分類に準じて職種を選択する必要があり、例えばウェブデザインやAI(人工知能)デザインなど、現在企業が求めている職種に対応しきれていない」「審査基準が明確ではない印象を企業が持っている」など、制度や運用上の問題点を挙げた。留学生が卒業後に韓国で就業・定着のためには、「官民が協力して職種分類を改修すること」や「申請ガイドラインの作成」「関連情報を集約したポータルサイトの設置」などの必要性に言及した。

最後に、外国人材が活躍する環境整備には、「都市・企業・大学」の3者が十分に連携していくことが重要として、フォーラムは締めくくられた。

写真 パネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)

パネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)

(注1)英国の大学評価機関のクアクアレリ・シモンズ(QS)が公表する、学生にとって最も優れた都市のランキング。東京は3年連続で2位にランクイン。

(注2)専門的な知識や技術・技能を有し、韓国の国家競争力に資すると認められる人材を対象とするもの。日本の在留資格「技術・人文知識・国際業務」に類似。

(唐澤和之)

(韓国)

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