南京の世界スマート製造博覧会で知財特別イベント開催

(中国)

上海発

2025年12月10日

江蘇省人民政府と国際知能製造連盟は11月27~29日、両機関の共催で「2025年世界スマート製造博覧会」を南京市で開催し、1日目の27日に知的財産権の特別イベント(以下、イベント)が開催された。イベントは、知的財産と地域経済発展、スマート製造、人工知能(AI)をテーマとし、世界知的所有権機関(WIPO)、中国の電子商取引(EC)大手のアリババ、大手電子機器メーカーのシャオミ(小米)などが出席し、AIが知的財産権の発展に与える影響、知的財産権保護による産業の発展などについて議論した。

イベントでは、「世界人型ロボット産業特許ナビレポート」(以下、レポート)が発表された。レポートによると、中国の人型ロボット産業は広東省がリードしており、地域格差が顕著だ。特許出願件数を見ると、広東省が3,369件でトップ、北京市2位、上海市3位、江蘇省4位と続く。一方で、同産業は、技術進化と市場予測バランス、コスト管理、知的財産権のリスクマネジメントといった課題に直面しているとの指摘もあった。

急成長するAI技術を背景に、スマート製造は産業変革の中核となり、知的財産権は従来の権利保護手段から企業存続を左右する戦略的資産へと変容しつつある。シャオミグループ法務総監の鄭娟娟氏はイベントの議論の中で、同社は、新エネルギー車(NEV)の材料開発や超高性能モーター製造の分野にもAIを活用することで、工場の再構築を通じて生産効率と製品品質の向上を実現していることを紹介した。

また、中国のAI分野におけるイノベーションは世界トップクラスに躍進している。WIPO中国事務所の劉華主任が示したデータによれば、中国は世界のAI関連特許の40%、コンピューター技術関連特許の60%、半導体関連特許の33%を占める。生成AI分野では、特許出願件数と科学技術論文発表数ともに世界首位を維持している。直近5年間のAI産業特許出願件数で江蘇省は、年平均20.1%増と急成長し累計14万件を突破し全国3位となった。増加率は、全国平均値を大幅に上回ったほか、人型ロボット分野では出願数で北京市や広東省を上回る。

一方、江蘇省知的財産権保護センター副主任の龔躍鵬氏は、同省の現状の課題を指摘した。同市によれば、企業のイノベーション主体性が不十分であり、企業による特許出願の割合は全体の62%にとどまり、広東省の86%と北京市の79%を大幅に下回る。さらに、海外特許ポートフォリオも不足しており、関連特許出願件数は全国6位(全国の3.7%)にすぎず、同省AI産業の国際競争力を制約する要因となっているとした。

(許蓓莉)

(中国)

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