富士山のまち・裾野市が挑む、地域イノベーション創出
(日本)
名古屋発
2025年12月10日
静岡県は2025年6月、内閣府から「第2期スタートアップ・エコシステム拠点都市・グローバル拠点都市」に選定された。これに伴い、ジェトロが支援する「Central Japan Startup Ecosystem Consortium
」(注1)へ岐阜県、三重県とともに加わった。さらに、県内東部の裾野市は、トヨタ自動車による実証都市「トヨタ・ウーブン・シティ」を擁しており、9月に第1期入居を開始した。同市では現在、スタートアップやオープンイノベーションを通じたエコシステム形成の機運が高まっている。ジェトロは11月28日、イノベーション事業を担当する大西千聡副市長に話を聞いた。
大西千聡裾野市副市長(ジェトロ撮影)
裾野市は10月24、25日の2日間、スタートアップをはじめとする多様な事業者と市内関係者(事業者・金融機関・行政など)の交流を目的に「地域イノベーションキックオフイベント
」を開催した。企画した大西副市長は、「裾野市がイノベーション創出に本気で取り組もうとしていることの表れ」とイベントの狙いを強調した。
このイベントには2日間で、市内外のスタートアップおよび起業家、大学関係者、金融機関など80人が参加した。初日には、裾野市が進める共創パートナー提案募集制度を紹介し、地域課題の解決や自由提案型のパートナーシップの在り方を共有した。2日目には、モビリティ(地域交通)、農業、介護、行政DX(デジタルトランスフォーメーション)という4つのカテゴリーに分かれ、参加者と市民が一緒になって、課題の洗い出しや解決策を協議した。
裾野市の強みは、富士山を臨む立地のもと、良質な空気と豊かな水資源、富士山ブランド、首都圏と東海地方の中間に位置するアクセスの良さなどが挙げられる。一方で、観光面における交通インフラ、農産物のブランディング展開などの強化が課題との指摘もある。これに対して裾野市は、内外の事業者をつなぐ「共創」を進め、エコシステムを形成して乗り越えることを目指す。
地域イノベーションキックオフイベントの様子(裾野市提供)
イベントに参加した市民は、「ここまで地域課題について深く話し合ったことは、今までなかった」と評価する。大西副市長も「心地よいスピード感、心地よい熱量のイベントになった」と振り返った。今後の目標は、海外のスタートアップも巻き込み、市内総生産の向上と関係人口の増加を目指すこととしている。
また、イベントに訪れた高校生の中には、副市長に「起業したい」と伝え、地域イノベーションづくりに意欲をみせる生徒もおり、次世代への刺激にもなった。大西副市長は「きっかけをたくさんつくることで、未来の街づくりにつながっている」と、新たなエコシステムの展開に期待を込めた。
(注)第1期は、中部経済連合会、名古屋大学、愛知県、名古屋市、浜松市などで構成される。広域産学官金が連携し、ジェトロと協働してスタートアップへの集中支援に取り組んでいる。
(渡辺広樹、劉美暎)
(日本)
ビジネス短信 9971987deac39d95




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