フィリピンで日系企業による農業分野のJCMプロジェクトが活発化

(フィリピン、日本)

マニラ発

2025年12月25日

フィリピンでは近年、日系企業による農業分野での2国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism:JCM、注1)プロジェクトが活発化している。

農業機械のヤンマーホールディングスは12月17日、農家向け脱炭素ソリューションを提供するフェイガー(東京都千代田区)と、フィリピンにおけるJCMに基づくクレジット売買契約を締結したと発表した(12月18日付ヤンマーホールディングス プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

両社は、稲作農家における間断灌漑技術(Alternate Wetting and Drying:AWD、注2)の普及を軸に、農業と環境負荷低減を両立する栽培ソリューションの提供、農業保険、融資、機械導入支援などを行い、フィリピン農家の気候変動適応能力および生産性向上を目指す。また、創出されるクレジットは、ヤンマーグループの国内外での事業活動で排出される温室効果ガス(GHG)のうち、残留分排出を相殺する。同社は、環境価値提供を通じた顧客のカーボンニュートラル貢献も目指す。

自動車部品メーカーのエフ・シー・シー(静岡県浜松市)は12月11日、自然由来のクレジットを創出するグリーンカーボン(東京都千代田区)と連携し、フィリピン中部のネグロス州においてAWDを活用した水田由来のメタン排出削減プロジェクトを開始すると発表した(12月11日付エフ・シー・シー プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同社は、現地政府、農業機関、大学、農家ネットワークと協働し、初年度は100ヘクタールから開始し、最終的には2万5,000ヘクタール規模への拡大を目指す。

そのほかにも、グリーンカーボンは、出光興産、大阪ガス、兼松、損害保険ジャパン、東邦ガス、芙蓉総合リース、三菱UFJ信託銀行との「水田JCMコンソーシアム」に参画し、フィリピンにおける水田由来のクレジットの普及拡大を目指している(10月23日付グリーンカーボン プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。農業機械メーカーのクボタも2024年2月から、クレアトゥラ(東京都港区)および東京ガスと連携し、AWDの普及および民間JCMプロジェクト登録に向けた実証事業に取り組んでいる(2024年2月28日付クボタ プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

農林水産省、アジア開発銀行が農業分野のJCM活用プロジェクトを支援

日本の農林水産省は、2024年1月からアジア開発銀行(ADB)と協力し、JCMを活用した農業分野のGHG削減について、フィリピンおよびベトナムにおける具体的手法を両国政府と議論してきた(注3)。フィリピンについては、日本とのJCM合同委員会で有識者委員会が作成した方法論が2025年2月3日、正式に承認された〔国際農林水産業研究センター(JIRCAS)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照〕。

(注1)2国間クレジット制度(JCM)は、相手国との企業間連携を通じ、日本の優れた低炭素技術の新興国などへの普及や地球規模でのGHG削減に貢献するもの。削減分は両国で配分されGHG削減目標の達成に活用可能。

(注2)間断灌漑技術(AWD)とは、水田に水を張る湛水(たんすい)と、水を抜く落水を繰り返す農法で、灌漑の節水とGHG削減が可能とされる。

(注3)詳細は、日本の農林水産省ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照のこと。

(西岡絵里奈、アギラー・パールホープ)

(フィリピン、日本)

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