香港政府、IP融資サンドボックスなどの知財支援を開始
(香港)
香港発
2025年12月25日
香港政府は12月22日、知的財産(IP)融資サンドボックスの開始(注1)と香港テクノロジー・イノベーション支援センター(HKTISC)の正式な運営開始を発表
した(注2)。HKTISCは、香港生産力促進局(HKPC)が商務・経済発展局(CEDB)と知識産権署(IPD)の支援を受けて設立した香港初のテクノロジー・イノベーション支援センターだ。HKTISCは2025年1月から特許検索・知財相談・知財研修などのサービスを段階的に提供開始してきたが、今回のIP融資サンドボックスの開始とともに正式な運営開始となった。
IP融資サンドボックスは、IPを担保とする融資を試験できるリスク管理された環境で、次の4つの原則に沿って運用される。
(1)IPの価値認識:参加銀行は融資審査の過程で、借り手企業のIPを、信用需要や財務状況、返済能力と合わせて評価し、担保資産としての信頼性を判断する。
(2)独立し標準化された価値評価:IPの価値評価は独立した専門機関が国際的に認められた手法で実施し、必要に応じて特許の質的評価レポートを活用する。
(3)リスク管理:参加銀行は、監督当局のリスク管理要件を順守する。企業は、法令や規制を守り、融資対象のIPの価値の維持・向上に努める。
(4)関係機関の協働:このサンドボックスは、IPを保有する企業、銀行、IP評価の専門家、法律の専門家、その他の関連する専門家が一体となって協働するエコシステムに支えられる。
同発表によると、IP融資サンドボックスへの参加機関は、専門家や政府機関の指導を受けながら、IP融資に関わる実務経験を積むことができる。香港の大手銀行3行がすでに参加を表明し、IPの価値評価や法律を専門とする30近くの事業者も参加に強い関心を示しているという。さらに2026年には、中小企業がIPの価値評価を受けるための資金援助も、HKTISCを通じて開始される予定だ。またHKPCの発表
によれば、HKTISCは2026年半ばから国家標準に基づく特許の質的評価のサービスも提供する予定だ。
商務・経済発展局の丘應樺(アルジャーノン・ヤウ)長官は、「IP融資サンドボックスは、香港の独自の強みを生かし、IPが厳格に保護され、明確に評価され、自信を持って資金調達できるエコシステムを構築することで、香港の地域IP取引センターとしての役割を強化する」と述べており、IPを有する企業に新たな資金調達の道が開くと期待される。
(注1)サンドボックス制度とは、革新的な技術やサービス(ドローン、自動走行、フィンテック、ロボットなど)を事業化する目的で、地域や期間を限定し現行法の規制を一時的に停止する制度。企業が制約されずに、革新的な技術の事業化に向けて、砂場のように自由に試行錯誤できるところから命名された。
(注2)いずれも、2025年9月に行われた李家超(ジョン・リー)行政長官による施政報告の中で「地域の知的財産権取引センター」に関して言及された取り組み(2025年9月19日記事参照)。
(南川泰裕)
(香港)
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