社会課題解決で協力を推進、「中央アジア+日本」ビジネスフォーラムが開催

(日本、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン)

調査部欧州課

2025年12月25日

「中央アジア+日本」対話・首脳会合の開催に合わせ、1220日に東京都内で「中央アジア+日本」ビジネスフォーラムが行われた(主催:経済産業省、ROTOBO、ジェトロ)。日本と中央アジア各国の官民関係者約640人が出席し、テーマ別で各国代表者が報告を行った。フォーラム内で、日本と中央アジア組織間で計158件の協力文書が披露された。

開会あいさつで赤澤亮正経済産業相が登壇し、自由貿易と法の支配のハイブリッドで中央アジアと連携し、同地域の成長につなげる意欲を示したほか、中央アジアに進出する日本企業数が着実に増加しているとし、「官民でモメンタムを高めていきたい」と表明した。

グリーン化と産業強靭(きょうじん)化に関する第1セッションでは、三菱重工業の深澤太郎GXセグメント長がトルクメニスタンで着工した肥料プラントの例を紹介した。同社の技術を用い原料のガス消費を削減できるほか、生産で排出される二酸化炭素を回収できるという。カザフスタンの再生可能エネルギー協会「カザク・グリーン」のヌルラン・カペノフ会長は、石炭火力に依存する同国で急速なグリーン化はリスクと指摘し、エネルギーシステムの安定性をどう確保するか、各国と力を合わせたいと訴えた。

デジタル・トランスフォーメーションとコネクティビティー推進に関する第2セッションでは、キルギス・ハイテクパークのアジス・アバキロフ総裁がa.若い人材が豊富にいること、b.シリコンバレーから多くの開発受注実績があること、c.親日であることを挙げ、日本企業にIT分野での進出や連携を呼びかけた。ウズベキスタンのシェルゾド・シェルマトフ・デジタル技術相は、インターネット環境整備などに5億ドル超を投じて力を入れてきたと述べ、企業誘致のため設立したITパークに入居する日本企業の数が2023年にゼロだったところ、26社に増加した実績を紹介した。

ファイナンス、人材育成、社会システム発展に関する第3セッションでは、トルクメニスタンのラヒムベルディ・ジェプバロフ対外経済関係銀行総裁が、同国政策の中で医療は優先的分野の1つと述べ、日本の資金に基づくアジア開発銀行の基金を活用した医療センター建設の例を紹介した。タジキスタンのアブドゥラフモン・アブドゥラフモンゾダ経済発展貿易相は、国家戦略に基づき、最近では年平均7.6%成長を実現し、貧困率も2015年の31%から2025年には19%まで改善した点を強調した。

プレナリーセッションには、高市早苗首相、カザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ大統領、キルギスのサディル・ジャパロフ大統領、タジキスタンのエモマリ・ラフモン大統領、トルクメニスタンのセルダル・ベルディムハメドフ大統領、ウズベキスタンのシャフカト・ミルジヨエフ大統領が出席した。高市首相は、「今後5年間で総額3兆円規模の民間プロジェクトを共に実施していく」と述べ、日本企業の技術を活用して共通の社会課題を解決する「互恵的危機管理投資」を進めると表明した。

写真 フォーラムで講演する高市首相(ジェトロ撮影)

フォーラムで講演する高市首相(ジェトロ撮影)

(浅元薫哉)

(日本、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン)

ビジネス短信 97189867388aeb50