欧州委、デジタル市場法違反のメタの対応と、グーグルの独占禁止法違反の調査開始を発表
(EU、米国)
調査部欧州課
2025年12月17日
欧州委員会は12月8日、米国メタがデジタル市場法(DMA)に準拠すべく、EUのユーザーに対し、フェイスブックおよびインスタグラムの個別化広告の代替選択肢を提供すると約束したことを認めた。メタはユーザーに対し、次の2つの選択肢を実質的に提供する。
- 全てのデータ共有に同意し完全に個別化(パーソナライズ)された広告を表示する。
- 共有する個人データを減らし、より限定的な個別化広告を表示する。
メタは2026年1月にEU域内のユーザーにこれらの選択肢を提示する。欧州委は2025年4月、メタに対してユーザーの選択権に関する不順守によるDMA違反と認定。その後、欧州委とメタの間で緊密な対話が行われていた。
また欧州委は12月9日、米国のグーグルがウェブパブリッシャー(注1)のコンテンツや、動画共有プラットフォーム、ユーチューブにアップロードされたコンテンツを人工知能(AI)目的に利用することに対し、EUの競争法に違反したかどうかを評価するため、正式な独占禁止法調査を開始した。
具体的には、グーグルはウェブパブリッシャーのコンテンツを適切な補償なしに、またコンテンツ使用を拒否する選択肢を与えずに検索結果ページ上で生成AIを活用したサービス(「AI概要」および「AIモード」、注2)にコンテンツを使用した。多くのウェブパブリッシャーがユーザートラフィックをグーグル検索に依存しており、そのアクセスを失うリスクにより、コンテンツ提供者のトラフィックや広告収益に影響することになる。各種報道によれば、AI概要やAIモードの展開後、多数のメディアやニュースサイトなどへのオーガニック検索(注3)による流入が顕著に減少したと報告されている。
ユーチューブに関しては、アップロードされた動画やその他のコンテンツが、創作者への適切な補償なしに、またコンテンツ使用拒否の選択肢を提供せずに、グーグルの生成AIモデル訓練(注4)に流用されている問題を指摘。グーグルはデータ使用を許可しない限りコンテンツのアップロードを認めておらず、そのコンテンツに対する報酬を支払っていない。同時に、競合するAIモデル開発者はユーチューブのポリシーにより、自社AIモデルの訓練にユーチューブコンテンツを利用することが禁止されている。
調査対象の行為が立証されれば、支配的地位の乱用を禁止するEU競争法に違反する可能性がある。欧州委は、本件について手続きを開始したことをグーグルおよび加盟国の競争当局に通知した。
(注1)ウェブサイトやアプリなどのコンテンツを提供・運営する企業。
(注2)AI概要とは、要約を自然検索結果の上部に表示する機能。AIモードは、会話形式でユーザーの質問に回答する機能。
(注3)検索エンジンの検索結果として表示されるもののうち、広告を除く通常の検索結果のこと。
(注4)大量のデータ(テキスト、画像、音声など)を用いて、AIにパターンや関係性を学習させ、新しいコンテンツを生成する能力を持たせるプロセス。
(坂本裕司)
(EU、米国)
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