育成塾を通じたパートナー探し、自社の客観視や商談で得た市場の声の活用がポイントに
(日本)
大阪本部ビジネス情報課
2025年12月16日
ジェトロは11月28日に、中小企業向けの海外研修、「中小企業海外ビジネス人材育成塾(以下、育成塾)」活用事例セミナーを大阪本部の主催で開催した。過去に育成塾に参加した海外市場に挑戦する事業者3社が経験談を披露。目指すターゲット顧客層や市場のニーズを踏まえた柔軟な思考と迅速な対応の重要性、そして海外展開に不可欠な海外に取り組む情熱と行動が語られた。
大阪府和泉市の医療機器メーカー、大研医器の吉井正次郎氏は、新規開拓において「海外」をひとくくりの市場として捉えて、国ごとの規制、医療水準、競合状況などの細かい要因を把握しないままのアプローチになっていた、と振り返った。「育成塾で学んだ手法の採り入れ、『自社の強みが最も刺さる市場』の仮説立て、絞り込みをかけながらの市場分析の中で、オーストラリアは医療水準が非常に高く、医療の質を重視する傾向と同社製品の強み(安全性、精度)との親和性が強いことが判明。展示会での接点を経て、最終的に現地の取引先候補との交渉にたどり着いた」とのこと。
島根県出雲市で和菓子の製造販売を行う坂根屋の坂根めぐみ氏も、「市場が求めるものに応じて提案することが大切」と語った。小売店向けの密封型商品の営業では成果が出なかったため、サイズを小さくした和菓子をレストラン向け冷凍デザートとして販売したところ、受注に結び付いた。現地の航空ストでフライト遅延に直面した際、英語が苦手と述べつつも、空いた時間で自転車を借りてネット検索した店舗に飛び込み営業を行った、というエピソードは参加者に強い印象を与えた。
酒器として出展したもののアートとしての評価が高かったため、アプローチを転換したと語った、石川県輪島市で漆器製造販売業を営む岡垣漆器店の岡垣祐吾氏も、市場の反応に適切に対応した1人。同氏は、育成塾直後の震災と同じ2024年の豪雨に直面しながらも、米国市場に挑戦した。目的は漆の価値を理解してもらうことであり、その上で職人の技術や価値、思いを伝えるため、美術館/ギャラリーでの展示(アート)とデザイナーとの協働(テーブルウェア)の二軸で活動をしている。
パネリスト3人は、展示会出展や商談を通じて「過去の実績を含めたEC(電子商取引)サイトの構築とお客様の誘引」(岡垣氏)、「展示製品が一目で分かるスタンドバナー」(吉井氏)「和菓子の美しさが分かる写真や自社・商品のストーリー性を盛り込んだ商談資料」(坂根氏)と、商談効果を高める工夫に取り組んでいるほか、育成塾の受講では、異業種からの参加者や講師から得られるコメントを通じて「自社を客観視」し、「新たな視点を発見」できた効果を実感した点にも異口同音に言及した。
セミナーの様子(ジェトロ撮影)
育成塾では、海外戦略の策定とそれを踏まえた商談資料の作成、さらにスキルアップを講義やグループワーク、商談ロールプレイを通じて少人数制で鍛えている。また、同塾同期生の異業種交流ネットワークの構築という副産物もある。海外市場に挑戦する事業者の参加を待ち望んでいる。
(上野由加里、池田篤志)
(日本)
ビジネス短信 8b9a4b79ee4ee127




閉じる
