ジェトロ、米国オクラホマ州に航空宇宙産業分野のミッションを派遣
(米国)
ヒューストン発
2025年12月08日
ジェトロは、米国オクラホマ州経済開発機構や同州タルサ市などと協力し、11月19~20日、同州に航空宇宙・ドローン産業関連分野のビジネス環境視察ミッションを派遣した。航空宇宙関連の製造業企業、商社、金融などの日本企業8社から12人が参加した。
オクラホマ州は航空宇宙産業をエネルギーに次ぐ主要産業としており、2024年の同州の航空機や部品の輸出額は前年比約60%増の約14億ドルを記録した。同州では、州都オクラホマシティやタルサ地域を中心に、1,100以上の航空宇宙分野関連企業・団体が集積し、12万人以上が従事している。また、全米初の無人航空システム(UAS)デザインの博士号プログラムを提供したオクラホマ州立大学など、航空宇宙分野の学位プログラムを提供する11校の教育機関が所在していることから、同州は技術革新・規制整備・人材育成・インフラ投資のすべてがそろった「次世代航空宇宙産業の実験場」と呼ばれている。
本ミッション初日は、オクラホマシティで州政府関係者などから、同州における航空宇宙分野のエコシステムについて説明を受け、同地域の産業動向や政府・経済開発団体による支援、主要プレーヤーなどについて理解を深めた。軍・商業用の航空機の改造から最新技術導入、整備まで一貫提供するフィールド・エアロスペースへの訪問では、整備・修理・オーバーホール(MRO)施設を視察した。続いて訪問した、オクラホマ州立大学が設立した航空宇宙分野の研究・教育・産業支援の統合機関「オクラホマ航空宇宙研究教育機構(OAIRE)」では、開発中のUASプロジェクトについて説明を受けた。同日の結びには、同州のマット・ピネル副知事(共和党)主催のレセプションで歓迎を受けた。同氏は、航空宇宙産業のさらなる成長に州としてコミットすることや、日本企業の進出への期待を語った。
フィールド・エアロスペースの格納庫にて(ジェトロ撮影)
2日目はタルサで、モンロー・ニコルズ市長(民主党)主催の朝食会で歓迎を受けた後、同市に本社を構えるノーダム・グループを訪問し、軍民両用(デュアルユース)航空機推進システム部品・構造材・内装・透明部品の製造、MROサービスなどを提供する内装工場を視察した。テクノロジー主導の経済開発団体タルサ・イノベーション・ラボ(注1)では、同市のスタートアップ支援や人材育成への取り組みについて学ぶとともに、同施設に入居する米国最大級のイノベーションハブ拠点であるグラディエント(注2)と、現地スタートアップ企業などとの意見交換を行った。また、無人航空機(UAV)や先進航空モビリティ(AAM)技術の研究・開発・実証試験を行うスカイウェイ36と、天候管理が可能な屋内ドローン飛行試験施設を提供するウィンドシェイプ(注3)を訪問し、設備を視察した。
ドローン飛行試験のための巨大送風機前で説明を受ける参加者(ジェトロ撮影)
プログラムに参加した日本企業からは、「これまで会う機会のなかった州政府関係者と話すことができた」「航空機メンテナンスやドローン関連事業におけるオクラホマ州のポテンシャルについて肌で感じることができた」といった声が寄せられた。
(注1)タルサ・イノベーション・ラボでは、航空宇宙、防衛、エネルギー、製造など同市が強みを持つ分野に注力し、地域コミュニティや政府機関と連携して資金・人材・技術を結びつける活動を行っている。
(注2)グラディエントは、タルサに拠点を置く米国最大級の非営利イノベーションハブで、スタートアップに教育プログラム、ネットワーキング、ワークスペースなどを提供する。2024年の実績は、479社を支援、3,816件の雇用、11件の特許、75件の製品導入、1億4,790万ドルの売上高など。
(注3)同社の送風機ウィンドシェイパーは、高さ16フィート、幅12フィート(約4.9メートル、3.6メートル)。3,456個の小さな扇風機で構成され、秒速6.5~16メートルを再現可能。設備費約120万ドル。
(諸遊健一郎、キリアン知佳)
(米国)
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