欧州委、ポーランド初の原子力発電所建設に対する国家補助を承認、2036年営業運転開始へ

(ポーランド、EU、米国)

ワルシャワ発

2025年12月12日

欧州委員会は12月9日、ポーランド初の原子力発電所建設に対する国家補助を正式に承認した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。EUでは、域内競争を不当にゆがめる可能性があるとして、加盟国による特定の企業に対する国家補助は原則として禁止されており、一定の条件を満たし、域内市場の原則に合致する場合にのみ、例外的に認められている。

支援対象は国営原子力発電会社PEJ(Polskie Elektrownie Jądrowe)が進めるプロジェクトで、総投資額は約420億ユーロと見積もられている。建設予定地はバルト海に面した北部ポモージェ県内のルビアトボ-コパリノ地区で、2028年に着工、2036年までに第1ブロックの営業運転開始を目指す。同プロジェクトでは、米国の原子力企業ウェスチングハウス・エレクトリック・カンパニー(WEC)のAP1000型原子炉が採用されており、3基構成で合計出力は3,750メガワット(MW)となる。ポーランド政府によれば、すでに600億ズロチ(約2兆5,800億円、1ズロチ=約43円、12月10日ポーランド国立銀行為替レート)の資金を確保しており、欧州委による承認を受け、早ければ2025年中には着工できる予定だ。

プロジェクトの支援策として、ポーランド政府は双方向の差額決済契約制度(CfD、注)を導入し、運転開始から40年間、収益の安定性を確保する。そのほか、プロジェクト費用の30%をPEJに出資し、また同社がプロジェクトの資金調達のために負った債務を100%保証する。

ポーランドでは、石炭が豊富に採れることから依然として石炭へのエネルギー依存度が高い(添付資料表参照)。原子力発電所の建設により、ポーランドおよび周辺諸国への電力供給の安全保障を高め、ポーランドのエネルギーミックスの多様化に寄与することが期待されている。

(注)発電事業者の投資リスクを減らすため、対象となる電源の固定価格(ストライクプライス)と市場価格の間の変動する差額を政府が補填(ほてん)する制度。市場価格がストライクプライスを上回る場合は、発電事業者が差額を支払う。発電事業者の収益の見通しを安定させ、投資のリスクを軽減するメリットがある。

(金杉知紀)

(ポーランド、EU、米国)

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