ドイツ政府、2035年内燃機関禁止の柔軟化を欧州委に要請

(ドイツ、EU)

ベルリン発

2025年12月08日

ドイツ連邦政府は11月28日、欧州委員会に対し、2035年以降の内燃機関搭載車販売の実質禁止について柔軟化を働きかけると表明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同日に、フリードリ・メルツ首相から欧州委宛ての書簡が送付された、と複数メディアが報じた。

ドイツ政府は2035年の規制の実施にあたり、電気自動車(EV)のみならず、プラグインハイブリッド車(PHEV)やレンジエクステンダー(注1)、高性能内燃機関(注2)など幅広い技術選択肢を認める方向性を求め、二酸化炭素(CO2)排出評価については、バリューチェーン全体を考慮する包括的な視点が必要と強調。また、政府は「イノベーションフレンドリーで技術中立的な規制」を掲げ、合成燃料・水素・EVなどあらゆる選択肢を検討対象とする方針を示すとともに、EV購入支援策の新たな枠組み検討にも言及した。メルツ首相は、目標は技術に偏らないかたちで達成されるべきであり、気候保護・競争力・雇用確保のバランスを取りながら、自動車産業を強化したいと強調した。

連立与党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)の連立委員会では、年金改革と並び、自動車産業政策が主要議題となり、11月28日の合意形成に至るまで調整が続いた。 報道などによると、CDU/CSUは、2025年2月の連邦議会選挙の公約(2025年2月20日付地域・分析レポート参照)でも掲げていたように、自動車産業を主要産業として支援するとした上で、EUの2035年内燃機関車新車販売禁止を撤回させ多様なテクノロジーを認めるべきと主張。一方のSPDは、気候変動対策の一環としてEV推進を主張しEU規制を基本的に支持していたが、雇用維持の観点から柔軟性を容認。電気自動車購入のための新たな助成プログラムについても合意された。

ドイツ自動車工業会(VDA)は、連立委員会での合意を受け、朗報と評価する旨の声明を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、ドイツ語)。欧州委に対しては、野心的な目標を設定するだけでなく、現実も考慮するべきと付言した。

経済紙「ハンデルスブラット」は12月1日、欧州委が2035年内燃機関車新車販売禁止の方針変更を示唆している、と報じた。 同紙はまた、欧州委が12月10日に自動車産業向け支援策を発表する予定だったが、年明けにずれ込む可能性もあると伝えた。

(注1)EVの航続距離延長を目的に搭載される小型発電機からなるシステム。

(注2)政府は11月28日の会見で、高性能内燃機関とは具体的に何を指すかの質問に対し、「結局のところ、それは全体的なイメージ」だとし、今はさまざまな技術オプションを評価することが重要と述べるにとどまった。

(中山裕貴)

(ドイツ、EU)

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