所得税改正法が公布、免税対象の拡大や配当課税の導入

(ブラジル)

サンパウロ発

2025年12月12日

ブラジルで11月26日、所得税改正に向けた法律第15.270号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが公布された(注1)。2026年1月1日から施行される。同法により、月収5,000レアル(約14万5,000円、1レアル=約29円)以下は所得税免除、5,000.01~7,350レアルまでは減税対象となる。一方、政府は税収減を補うため、年間所得60万レアル超の高所得者に対する追加課税(注2)などが導入される。

また、1996年以降、非課税だった利益配当金に対し、10%の源泉徴収税(IRRF)を課税する。ただし、国内居住個人向けには月額5万レアルの免税枠が設けられ、国内法人向けは依然として課税対象外。国外居住者向けは個人・法人とも課税対象となる。円滑な移行措置として、2025年12月31日までに配当決議が承認され、原資が2025年までの利益であれば、支払いが2026年以降でも免税が維持される(注3)。

しかし、この規定への批判は多い。例えば、ロエーゼル・アダジ弁護士事務所のレチシア・ミケルッチ弁護士は現地紙「フォーリャ」(11月26日付)に対し、会計年度終了前の年間所得額等の確定はリスクがあると指摘した(注4)。税務弁護士のベロニカ・マガリャンイス氏も同紙のインタビューで、「手続きの条件を満たすために適当な数字を報告する企業も出てくるかもしれない」と懸念を示した。

また、法律第6.404号(通称:株式会社法)に基づき、配当の支払いは決議と同年に支払う必要があるため、現地誌「エザーメ」(11月11日付)は、2025年内の支払い義務の有無に関する疑問が生じていると報じた。ブラジル公開会社協会(ABRASCA)のパブロ・セザリオ会長は同誌で、「法的不安定性の典型」とコメントしている(注5)。

(注1)法案は3月18日に財務省が提出、11月5日に上下両院で可決。

(注2)年間所得のうち60万~120万レアルの部分には0~10%の追加税率が段階的に増加しながら適用され、120万レアルを超える部分には一律10%が適用される。なお、この計算(年間所得)には、相続、贈与など一部の収入は含まれない。詳細は財務省ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照。

(注3)なお、免税維持に関する規定は不明確で、国外居住者は対象外と解釈される可能性がある。このため、一部企業は国外居住者への配当について、決議承認のみならず2025年内の支払いを急ぐ動きを見せている。大手会計事務所プライスウォーターハウスクーパース(PwC)は11月28日公表の資料で、2025年12月31日までに承認された国外居住者向け配当は、支払いが2026年以降でも免税維持されるとの見解を示した。ただし、ブラジル国税特別局が異なる解釈を行う可能性があるとして留保を付している。

(注4)ブラジルの会計年度は 1月1日~12月31日。

(注5)現地紙「エスタード」(12月3日付)によると、2025年内に配当金を支払う予定の株式会社に対し、銀行による融資提供が増加している。

(エルナニ・オダ、中山貴弘)

(ブラジル)

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