中東進出日系企業調査、UAEは注目国2位、黒字割合と拡大意欲は域内最多

(中東、アラブ首長国連邦)

調査部中東アフリカ課

2025年12月22日

ジェトロは12月11日、「2025年度 海外進出日系企業実態調査(中東編)」を発表した。中東8カ国に進出する日系企業206社に対して、現地での活動実態に関するアンケート調査を2025年9月1~22日に実施し、取りまとめたもの(8カ国、177社から有効回答)。

2025年の営業利益見込みについて黒字と回答した進出日系企業の割合は、世界全体で66.5%、中東全体で73.8%だったが、アラブ首長国連邦(UAE)では前年比4.3ポイント増の83.3%と域内最高だ。これは、世界の主要国の中でも高い比率だ〔「2025年度 海外進出日系企業実態調査(全世界編)」参照〕。

さらに、今後1~2年の事業展開について「拡大」と答えた割合は世界全体で46.2%、中東全体で49.1%のところ、UAEでは61.8%となり、こちらも域内最多だった。UAEでの事業拡大の理由として、「現地市場ニーズの拡大」が66.0%、「輸出の増加」が48.9%、「競合他社に比べて優位性が高い」が23.4%で続いた。なお、UAEの日系企業の48.6%が、今後、現地従業員数を増加すると回答した(中東全体では37.7%)。

UAEの魅力はフリーゾーンや経済特区など

UAEにおいて、投資環境面での魅力(複数回答可)は、「フリーゾーン/経済特区などのメリット」が前年から15.5ポイント増の66.7%で最多だ。「市場規模、成長性」が62.5%、「駐在員の生活環境」が61.1%、「税制面でのメリット」が54.2%、「言語、コミュニケーション上の障害が少ない」が51.4%、「インフラの充実」が50.0%で続いた。

なお、中東進出日系企業の今後の注目国(複数回答可)として、UAEは前年と同様2位(49.4%)だ(1位はサウジアラビア、3位はエジプト)。UAEにおいて有望視するビジネス分野(複数回答可)は、資源・エネルギーが40.5%で最多。インフラが37.8%、消費市場が33.8%、サービス業が21.6%で続いた。資源・エネルギーでは、天然ガス、水素、石油、燃料アンモニア、炭素回収の順で回答割合が多い。インフラでは、都市開発、電力が同率首位、水、鉄道、空港、港湾が続いた。

ビジネスのコスト増などの課題も

UAEの投資環境面での課題(複数回答可)は、「不動産賃料の高騰」が前年比3.7ポイント減も56.5%で前年と同様に最多。「人件費の高騰」が続き、コスト上昇関連が上位2項目となった。さらに「法整備の未整備・不透明性」が44.9%で続いた。

また、UAE進出日系企業が、政治・外交的な動きが活動に「大いに影響がある」と「やや影響がある」と回答した割合は、前年比1.9ポイント増の合計88.2%だった。特にイスラエル・ハマス衝突や紅海でのフーシ派攻撃(特集「地政学的影響を踏まえた中東・アフリカの物流動向」参照)を挙げた企業が多い。

(井澤壌士)

(中東、アラブ首長国連邦)

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