米サンフランシスコ市、超加工食品の安全性を懸念し食品大手10社を提訴

(米国)

サンフランシスコ発

2025年12月11日

米国カリフォルニア州サンフランシスコ(SF)市は12月2日、クラフト・ハインツ、モンデリーズ・インターナショナル、ポスト・ホールディングス、コカ・コーラ、ペプシコ、ゼネラルミルズ、ネスレUSA、ケロッグ、マース・インコーポレイテッド、コナグラ・ブランズの食品大手10社を、カリフォルニア州不正競争法および公害法違反で提訴外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

デイビッド・チウSF市検事が訴訟を起こすと発表した。同検事は「企業が食品を認識できないほど加工する超加工食品(Ultra-processed Food、注)の開発と販売により公衆衛生上の危機を招いた」と主張した。さらに、低所得層や有色人種コミュニティーを標的にしたマーケティングを問題視している。超加工食品は、米国食品の約70%を占め、近年は2型糖尿病、脂肪肝、心血管疾患などとの関連が指摘されている。SF市は、具体的に、企業のマーケティング規制、消費者への救済措置などを求めている。

これに対し、業界団体の消費者ブランド協会(CBA)のサラ・ガロ製品政策担当上級副社長は、「超加工食品には一貫した科学的定義が存在しない。食品栄養価全体を無視し、加工度のみで悪く扱うことは消費者をミスリードし、健康格差を悪化させる」と反論している(「フォックス・ビジネス」12月3日)。

カリフォルニア州は規制で全米をリード

超加工食品については、米国食品医薬品局(FDA)と米国農務省(USDA)が2025年7月に「超加工食品の統一的定義」の策定に向けて、必要な項目や根拠となるデータを募った。今後、消費者の食の安全性と透明性を高めるため、ラベル表示の義務化などの可能性がある。

一方、カリフォルニア州は、公立学校で提供される給食と校内販売において、特に有害な超加工食品を段階的に排除する法律(AB1264)を2025年10月に全米で初めて制定した。同州は連邦政府に先駆け、超加工食品に係る規制をリードしている。

(注)一般に工業的に生産された食材で構成され、一連の工業技術と工程を経て製造された食品を指す。超加工食品には、着色料、風味料、乳化剤、人工甘味料、増粘剤、発泡剤、消泡剤、増量剤、ゲル化剤など、超加工食品の製造にのみ使用される添加物が含まれている場合がある。超加工食品は、遺伝子組み換え食品とは異なる。キャンディー、チップス、加工肉、ソーダ、エナジードリンク、箱入りマカロニ&チーズ、朝食用シリアルなどが含まれる。

(芦崎暢)

(米国)

ビジネス短信 647aa908f1dc4e1b