英政府、重要鉱物戦略を発表、輸入依存の低減へ

(英国)

ロンドン発

2025年12月03日

英国政府は11月22日、重要鉱物の自給率向上とサプライチェーン強化を目的とした新たな重要鉱物戦略を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。リチウム、ニッケル、銅、レアアースなどの重要鉱物は、電気自動車(EV)や風力タービンなどのクリーンエネルギー分野、先端製造業および防衛産業に不可欠とされている。

本戦略では2035年までの目標として、国内生産の拡大により重要鉱物の年間国内需要の10%、さらにリサイクルによる鉱物回収で同20%を確保する方針を掲げている。また、供給の多角化によって、いずれの鉱物も2035年までに単一国への依存度を60%以下に抑えるとしている。自然災害や地政学リスクなどによる世界的な供給途絶に備え、強靭(きょうじん)なサプライチェーン構築を目指す。

最大5,000万ポンド(約103億円、1ポンド=約206円)の新規支援金による鉱物関連プロジェクトへの支援、英国輸出信用保証局(UKEF)やナショナル・ウェルス・ファンド(NWF)など公的金融を活用した投資促進、採掘・処理事業者への電力価格支援、関連プロジェクトの許認可手続きの優先化、鉱山・加工・リサイクル分野の技能育成、需要集約プラットフォームの設立といった施策が盛り込まれている。

英国では、家庭用電気プラグや自動車のブレーキに使用される銅の需要が2035年までに2025年の2倍に、ノートパソコンやEVの動力源として不可欠なリチウムの需要は12倍に拡大すると見込まれる。リチウムについては、今後10年間で5万トンの国内生産を目標としている。

英国は現在、重要鉱物の国内供給は需要全体の6%にとどまっているが、同産業は17億9,000万ポンド規模の経済活動と5万人超の雇用を直接支えている。重要資源が存在する北東イングランドのダラムおよびティーズサイド、南西イングランドのデボンおよびコーンウォールなどの地域で、採掘・精製を目的とした50以上の重要鉱物プロジェクトが進行している。

UKEFは11月24日、英国の重要鉱物サプライチェーン強化に向けた新たな保証制度「重要物資輸出開発保証(Critical Goods EDG)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。同制度では、英国輸出業者に重要鉱物製品を供給する、英国に拠点のある企業に対し80%の資金保証を提供する。供給企業の資金調達を後押しすることで、長期輸入契約の確保や国内生産能力への投資を促進し、サプライチェーンの強靭化を図るとしている。

(野崎麻由美)

(英国)

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