フランスでAIの産業利用推進サミット開催

(フランス、EU、中国、米国)

パリ発

2025年12月08日

人工知能(AI)のビジネスへの適用を世界各国の最高経営責任者(CEO)などで議論する欧州最大級のAIサミット「Adopt AI」が112526日、フランス・パリのグラン・パレで開催された。20252月に開催されたAIアクションサミット(2025年2月14日記事参照)のビジネス面を受け継ぐかたちで、社会インフラ、ヘルスケア、金融、小売り、観光、環境などの分野から、2万人を超える来場者、500人を超えるスピーカーが参加した。

写真 Adopt AIの会場内(ジェトロ撮影)

Adopt AIの会場内(ジェトロ撮影)

会期初日にはエマニュエル・マクロン大統領が登壇し、AIを欧州・フランス企業、公的機関、地域社会に役立て、欧州発かつ主権性のあるソリューションを持つことの必要性を訴えた。マクロン大統領は、欧州レベルでAIを実装していくために、規制の簡素化、イノベーションへの投資、主権保護が重要であることを指摘するとともに、市場権力を乱用し競争を阻害する支配的プレーヤーからデジタル市場をよりバランスのとれたものにするため、今後建設されるAIギガファクトリーへの資金供給に主権基準を追加する考えを表明した。また、中国の排他主義、米国の米国優先主義に対し、EUは世界で唯一、非欧州優遇が残された地域であり、欧州製のソリューションを採用するよう参加企業に呼びかけた。

サミットには、国内外の大企業の CEO や経営幹部が数多く登壇。フランス大手企業のエアバス、カルフール、フランス電力(EDF)、トタルエナジーズ のCEO、さらにエヌビディアなどテック大手関係者も壇上に上がった。

写真 登壇ステージ(ジェトロ撮影)

登壇ステージ(ジェトロ撮影)

このイベントは、技術の展示にとどまらず、企業リーダー、政策決定者、業界関係者、スタートアップ、技術ベンダーが一堂に会し、AIの導入を加速しビジネス変革を推進する機会となった。カンファレンスを通して、AIがもはや先端研究の領域だけでなく、産業構造の変革、企業経営、社会インフラ、環境対策など多様な分野で現実的な力を持つことを示し、AIの実装と普及が、今や政策のみならずビジネスの主流戦略であることを示した。

次回は、2026年12月3~4日にグラン・パレで開催予定。

(鈴木萌々)

(フランス、EU、中国、米国)

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