ドイツ業界団体、極右AfDとの対話表明も批判受け撤回
(ドイツ)
ベルリン発
2025年12月03日
ドイツの業界団体「家族経営者協会(Die Familienunternehmer)」が、極右政党のドイツのための選択肢(AfD)への接触禁止を解除し、10月初旬に同協会が開催した交流イベントである議会の夕べにAfD所属の連邦議会議員を招いたことが、経済紙「ハンデルスブラット」(11月24日)をはじめ国内の複数のメディアで報じられた。これを受け、加盟企業の脱退や他業界団体からの批判が相次ぎ、同協会は11月30日に「招待は誤り」だったとする方針修正を発表した。
同協会はAfDとの接触解禁を報じられたことを受け11月24日、AfDと対話していくことを表明。ファイアウォール(注)にも関わらずAfDは力強く成長しており、今役立つのは単純な「善」と「悪」の分類を超えた、AfDの政策内容との対話だけであるとした。対話することは協力することではないと強調し、AfDの政権参画は望まないとしながらも、議論の必要性を訴えた。
同協会の表明に対し、企業は即座に反応。上述のイベント時に会場を提供したドイツ銀行は次回の会場提供の契約を取り消したとし、ドイツ銀行側は招待者リストを知らなかったと報じられた。加盟企業では、ドラッグストア大手ロスマンや飲料メーカー大手のフリッツ・コーラなどが相次いで脱退を表明したと報道された。ドイツ産業連盟(BDI)をはじめ主要な経済団体は、一斉にAfDとの距離を引き続き取る姿勢を明確にした。
批判が高まる中、家族経営者協会は11月30日、「招待は誤り」とする声明を発表。同協会は、AfDに批判的に立ち向かい、同時に私たちの立場を明確に伝えるための別の議論の方法を見つけなければないとし、今後数週間から数カ月かけて会員と協議する予定であり、今後の州議会選挙でもAfDに対して明確かつ目に見える形で反対の立場を取る方針を示した。
同協会の姿勢転換を受け、キリスト教民主同盟(CDU)、社会民主党(SPD)、緑の党の各党所属の政治家はこの決定を歓迎。AfDは、「遅くとも、AfDが政権を担うようになった場合、家族経営者協会やその他あらゆる協会が、私たちと緊急に話し合いたいと思うようになるだろう」と、方針転換を厳しく批判した(「ハンデルスブラット」紙12月1日)。
ハンデルスブラット(12月1日付)は、多くの企業経営者は、有権者の4分の1から支持されているAfDをどのように扱うべきかという課題に直面しており、この問題に引き続き公にコメントすることを望んでいないと、難しい現状を指摘した。
(注)民主的な政党が極右政党との協力を拒否するという戦後ドイツの基本的なコンセンサス。
(中山裕貴)
(ドイツ)
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