エチオピアでマールブルグ病を初確認、空港検疫を強化

(エチオピア、ケニア、南スーダン共和国、ウガンダ、タンザニア)

アディスアベバ発

2025年12月15日

エチオピア保健省は11月14日、南エチオピア州ジンカ市で同国初となるマールブルグウイルスによる感染症(マールブルグ病)の発生を確認した。12月10日時点の報告によると、累計検査数1,676件のうち確定例は13件(死亡8件、回復4件、治療中1件)。マールブルグウイルスは、エボラ出血熱と同様のフィロウイルス科に属し、感染した場合の致死率は最大88%に達する。

世界保健機関(WHO)は11月21日、発生地であるジンカ市が首都アディスアベバや主要国際空港から地理的に離れていることなどを踏まえ、現時点での旅行・貿易の制限は推奨しないとの見解を示した。また、米国疾病予防管理センター(CDC)は12月10日、南エチオピア州に加えシダマ州ハワサ市でも症例を確認したと発表したが、米国への流入リスクは「低い」と評価している。在エチオピアの米国大使館も11月18日以降、南エチオピア州への公用渡航を制限しているが、アディスアベバへの渡航制限は課していない。

一方で、エチオピア政府は国家対策本部を設置し、発生地域での隔離センター開設や、空港・国境検問所でのスクリーニング検査を強化している。同国では現在、コレラ、麻疹、デング熱などの流行も重なり、保健医療体制への負荷が増大している。さらに、アフリカ疾病管理予防センター(Africa CDC)のジーン・カセヤ事務局長は、隣国の南スーダンの脆弱(ぜいじゃく)な保健システムへの波及を懸念し、国境を越えた感染拡大への警戒を呼びかけている。

周辺国でも警戒レベルが引き上げられている。ケニアでは12月10日、エチオピア便が乗り入れるジョモ・ケニヤッタ国際空港などで、早期発見・隔離に向けた準備態勢の強化訓練を実施した。東アフリカ地域では近年、マールブルグ病の散発的な発生が続いており、英国政府の集計によると、ルワンダでは2024年9月以降15人、タンザニアでは2025年1月以降10人の死亡が報告されている。

なお、日本の外務省は11月18日、マールブルグ病の感染者が発生している区域には近づかないよう注意喚起するスポット情報「エチオピアにおけるマールブルグ病の発生外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表している。

(石川晶一)

(エチオピア、ケニア、南スーダン共和国、ウガンダ、タンザニア)

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