世界銀行、構造改革とデジタル変革を背景にGCCの経済成長を予測

(中東、湾岸協力会議(GCC)、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、カタール、オマーン、クウェート、バーレーン)

調査部中東アフリカ課

2025年12月15日

世界銀行は12月4日、湾岸協力会議(GCC)諸国の最新の経済状況に関する報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。GCC諸国は構造改革と急速なデジタル変革を背景に、経済成長の勢いが増していると報告した。

世界銀行は、炭化水素が依然として財政状況の大部分を占めており、引き続き経済計画や開発戦略に大きな影響を与えると指摘した。非石油部門の輸出では化学製品が多くを占め、石油依存からの脱却は現在も進行中とした。

さらに、GCC諸国はデジタル変革と人工知能(AI)の導入が進んでいることを強調した。GCC全域で第5世代移動通信システム(5G)の普及率は90%を超えており、データセンターや高性能コンピュータへの投資がAI活用を後押ししているという。GCCの中でも、アラブ首長国連邦(UAE)とサウジアラビアがこの分野で地域、さらには世界のリーダーとして台頭しているとした。

各国の2025年の実質GDP成長率(かっこ内)と見通しは次のとおり。

  • UAE(4.8%):石油部門と非石油部門のバランスが取れており、輸出基盤も多様化。今後も幅広い分野で成長を続けていく。
  • サウジアラビア(3.8%):石油部門、非石油部門の双方で成長。一方、原油価格の下落により、財政赤字は拡大し、債務のGDP比率は32%に上昇。国家改革戦略「ビジョン2030」の進行と、外国企業の参入規制の緩和により、外国からの投資が拡大する見込み。
  • バーレーン(3.5%):堅調な成長を維持し、非石油部門、特に金融サービスと観光分野が牽引。インフラ、ガス、物流、フィンテック、観光への投資が中期的な見通しを支えるものの、財政赤字と公的債務により財政が逼迫。
  • オマーン(3.1%):経済の多角化が進み、非石油・ガス部門が成長を牽引。中期的にはさらに成長が加速する見込み。
  • カタール(2.8%):非石油部門は引き続き好調で、原油・ガス価格が下落しているにもかかわらず、国際収支の黒字を維持。ノース・フィールドの拡張によって液化天然ガス(LNG)の生産量が大幅に増え、カタールの世界市場での存在感がさらに高まる。財政収支と経常収支の黒字も引き続き安定見込み。
  • クウェート(2.7%):地域の不安定性、原油価格の低迷、OPECプラス(注)による減産の影響で2023年と2024年は経済成長が減速したものの、2025年は石油輸出の増加によりプラス成長に回復。

(注)OPEC加盟国のイラン、イラク、クウェート、サウジアラビア、ベネズエラ、リビア、UAE、アルジェリア、ナイジェリア、ガボン、赤道ギニア、コンゴ共和国の12カ国と、非加盟の産油国のアゼルバイジャン、バーレーン、ブラジル、ブルネイ、カザフスタン、マレーシア、メキシコ、オマーン、ロシア、スーダン、南スーダンの11カ国で構成する。

(加藤皓人)

(中東、湾岸協力会議(GCC)、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、カタール、オマーン、クウェート、バーレーン)

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