米ロサンゼルスで「Road to 2028」サミット開催、ワールドカップとLA28を契機に広がるクリーンテックの機会

(米国)

ロサンゼルス発

2025年12月24日

米国カリフォルニア州ロサンゼルス(LA)市のLAクリーン・インキュベーター(LACI)は12月8~9日、同市ダウンタウン近郊で「Road to 2028:リーダーシップサミット」を開催外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同サミットは、2026年のFIFAワールドカップや2028年のLAオリンピック・パラリンピック(LA28)の開催を契機として、同市の環境への取り組みを官民で議論するもの。同市ではワールドカップ開催を6カ月後、オリンピック・パラリンピックの開催を2年7カ月後に控えているが、LA都市部の交通は車に依存していることから大気汚染が深刻な問題となっている。ワールドカップやLA28で世界から選手や観客を迎えるにあたり、クリーンエネルギーの導入、排ガスの原因とされる自動車やバスの電動化が優先事項となっており、交通、商業施設でのクリーンエネルギーの導入を急ピッチで進めている。

LACIのマット・ピーターソン最高経営責任者(CEO)は冒頭あいさつで、「クリーンエネルギーパートナーや、期待の輸送パートナーとの協力関係を継続し、創業者や人材育成プログラム修了者と共にクリーンエネルギーと交通の電化に向けた進歩を加速させるために、皆さんをここに招いた」と語った。また、「大会前にクリーンエネルギーと輸送の電動化を実現し、世界にLAやカリフォルニアが得意とする、米国のイノベーション、起業家精神を知ってもらう機会にしたい」とし、気候変動対策におけるリーダーシップを示す機会でもあると強調した。

ロサンゼルスの都市部の交通は車に依存していることから大気汚染が深刻であり、ワールドカップやLA28の開催で世界からの選手を迎えるにあたり、クリーンエネルギーの導入、排ガスの原因とされる自動車やバスの電動化が優先事項となっている。

同サミットでは、LA28における官民提携プロジェクトが紹介された。ホンダは電気自動車(EV)の提供に加えて、電動スクーターや全地形対応車(all-terrain vehicle、ATV)など多様なモビリティ車両を大会期間中に供給する。また、米ハイランド・エレクトリック・フリーツは、大会期間中にEVスクールバス500台を提供する契約を交わしている。ニュージーランド発の自動運転EVバス「Ohmio」は、LA近郊のリバーサイドで実証実験を開始しており、計画が予定どおり進めば、大会での活用も考えられるという。

また、米ウーバーは、大会期間中の移動を支える交通サービスパートナーであるほか、都市部での排ガス削減、EV車両の導入を推進する。同社サステナビリティ担当のテス・サンチェズ氏は「現在ウーバーで用いている車両は5台に1台がEVだ。ウーバーの運転手は1日平均約200マイル(約322キロ)と平均よりも長い距離を走行するため、ウーバーの電動化の推進は排ガス削減に大きく貢献できる」と述べた。

カリフォルニア州の公共のEV充電器の設置数は20万基に達した。これは、LA28に向けて設定された、地域交通の電動化への大胆な目標の達成の大きな節目になっている。インフラ面においては、このほか、物品の輸送に使用されるEVトラックやマイクロモビリティ、電動車いすなどにおいて多くの調達が必要とされる。

LA市は同サミットの中で、同市が2025年11月、石炭火力発電依存から完全に脱却したと報告した。同市は2035年までのクリーンエネルギー率100%を目標に掲げ、環境への取り組みで米国をリードする計画を立てている。クリーンエネルギーの全面導入を実現するにあたり、今後の残された期間でいかに効率よくイノベーションや交通面での脱炭素化を図るかが期待される。

(サチエ・ヴァメーレン)

(米国)

ビジネス短信 494544d83aae71da