ドイツのドローンスタートアップ、シリーズCで年間3.4億ユーロ調達し評価額30億ユーロ超に
(ドイツ)
ベルリン発
2025年12月10日
ドイツのドローン・関連ソフトウエア開発のスタートアップであるクオンタム・システムズは11月28日、シリーズC(注1)ラウンドの延長として1億8,000万ユーロを調達したと発表した(プレスリリース
)。これは、2025年5月に1億6,000万ユーロを調達したシリーズCに続くもので、2025年の年間調達総額は3億4,000万ユーロに達し、欧州のデュアルユース分野における資金調達として過去最大規模となったと発表した。これにより同社の評価額は30億ユーロを超えた。
同社は2015年設立で、無人航空機システム(UAS)(注2)の開発から設計・製造を専門としている。本社はドイツ・ミュンヘン近郊にあり、従業員約1,000人を抱え、ドイツのほか英国、米国、オーストラリア、ルーマニア、ウクライナ、リトアニアに拠点を持つ。同社のプラットフォームとソフトウエアは、欧州・米国全域のNATO、オーストラリア、ニュージーランドで展開されているほか、ウクライナでも2022年の本格的なロシアによる侵攻開始以来運用されている。
今回調達した資金は、陸・海・空におけるユースケースを網羅するマルチドメイン(多領域)展開の加速、人工知能(AI)・ソフトウエア・ハードウエア開発の加速に充てられるほか、戦略的買収も継続する方針。
報道によれば、同社は資金調達に加え、防衛分野での大型契約を獲得している。経済紙「ハンデルスブラット」(12月5日)によると、同社はドイツ連邦軍から最大750機の偵察ドローンを受注した。初期契約は147機で、追加600機のオプションを含めた発注総額は約8,500万ユーロに上ると報じられた。また同紙によると、同社はエアバスの防衛部門子会社と提携し、ドイツ連邦軍のAIを活用した監視システム開発プロジェクト「Uranos KI」(注3)にも参画。本プロジェクトはNATO東側領域の監視を目的とし、同社とエアバス防衛子会社は2,830万ユーロの契約を確定。同じく本件を受注した防衛用AIスタートアップのヘルシングを含めた3社はオプションとして、システムが成功すれば6,800万ユーロの追加受注を獲得できる可能性があると伝えられた。
(注1)投資ラウンドの最終段階で、新規株式公開(IPO)やM&Aを目指す段階のこと。
(注2)Unmanned Aerial Systemsの略。ドローンなど無人航空機と、それを運用するための関連システム全体を指す。
(注3)ドイツ語の「KI」は人工知能(Künstliche Intelligenz)を意味する略語。
(中山裕貴)
(ドイツ)
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