日タイ投資フォーラムを開催、「共創・共成長」の戦略語る

(日本、タイ)

調査部アジア大洋州課

2025年12月02日

タイ投資委員会(BOI)は11月28日、東京都内で「日タイ投資フォーラム」を開催した。フォーラムには、松尾剛彦経済産業審議官、エクニティ・ニティタンプラパス副首相兼財務相、BOIのナリット・タードサティーラサック長官らが登壇し、日タイ経済協力の深化に向けた戦略を語った。

松尾審議官は歓迎の辞で、タイがASEANの自動車産業ハブとして60年以上にわたり日系企業とサプライチェーンを構築し、関連産業で約85万人の雇用を生み出している点を強調した。また、脱炭素化に向け、タイの自動車産業は大きな転換期にあり、日本が得意とするハイブリッド車(HEV)市場が拡大していると述べた。さらに、データセンター整備や半導体産業育成、ヘルスケア分野での協力にも言及し、日本のスタートアップによる人工知能(AI)がん診断技術や、富士フイルムの健診センター「MURA」開設計画など、日タイ共創の事例を紹介した。

続く基調講演で、エクニティ副首相兼財務相は、過去5年間(注1)で日本からタイへの投資申請が約1,500件、総額約1兆9,000億円に達したことを報告。また、タイ政府の景気刺激策「クイック・ビッグ・ウィン」を紹介し、(1)経済・観光促進、(2)家計債務軽減、(3)中小企業の流動性向上、(4)貯蓄増加、(5)将来投資の5本柱を説明。投資の重点分野として、デジタル、クリーンエネルギー、半導体、データセンターを挙げた。さらに、タイの発電構成に占める再生可能エネルギー比率を2037年までに50%へ引き上げる方針や、二酸化(CO2)炭素回収・貯留(CCS)技術の推進を強調した。

ナリットBOI長官は、「タイの新たな投資戦略とビジネスチャンス」と題し、5つの成長分野〔(1)バイオ・サーキュラー・グリーン(BCG)産業、(2)電気自動車(EV)・バッテリー、(3)半導体、(4)デジタル・AI、(5)国際ビジネスセンター(IBC)〕を提示した。また、「タイランド・ファストパス」制度による投資認可の迅速化、人材育成支援、地場企業の競争力強化策、長期滞在ビザ(LTR)、タイ投資・外国人サービスセンター(TIESC)設置など、投資環境改善策を紹介した(注2)。

登壇者は総じて、地政学リスクや環境対応など複雑な課題に直面する中、日タイが「共創」を通じて新たなサプライチェーンを創出し、持続可能な経済成長を実現する重要性を強調した。

(注1)同フォーラムのBOI資料によれば、2020~2025年9月における投資申請が件数で計1,493件、金額では1兆9,320億円。

(注2)個別施策の詳細は、同フォーラムに関するBOIウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますより、BOI資料をダウンロードして確認可能。

(田口裕介)

(日本、タイ)

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