モロッコで外国人居住者が10年間で76%増加、サブサハラ系移住者が多数派に

(モロッコ、アフリカ、世界)

ラバト発

2025年12月23日

モロッコ高等計画委員会(HCP)が12月4日に公表した2024年国勢調査(RGPH 2024)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、同国に在住する外国人(注)は人口全体(2024年:3,680万人)の0.4%と割合自体は小さいものの、14万8,152人に達し、2014年(8万4,000人)比で76.4%の大幅増となった。増加ペースは近年著しく、特に2021年以降の流入が55.3%を占める。

国籍別では、セネガル(18.4%)、コートジボワール(17.3%)、フランス(13.8%)が上位を占め、西アフリカ諸国からの流入が顕著だ。

出身地域別では、サブサハラ・アフリカが59.9%と最大の構成比を占め、2014年の26.8%から大幅に拡大した。一方、歴史的に多かった欧州出身者は20.3%(2014年:40%)へと縮小、MENA地域(中東・北アフリカ)出身者も13.3%(2014年)から7.3%に縮小した。マグレブ諸国出身者は、リビア移民の数の減少により、2014年の13%から6%に縮小した。アジア、北米からの移住者は安定した割合で、ビジネスや留学、専門職などに関連するとされている。アジア地域からの移民の内訳上位は、中国(24.8%)、フィリピン(21.5%)、トルコ(15.0%)、インド(11.7%)、韓国(5.9%)と続く。

移住理由をみると、就労目的が53.3%と最多で、建設、サービス、農業、インフォーマル部門での需要が背景にある。続いて、家族理由が20.8%、留学14%(主にサブサハラ・アフリカから)となった。外国人住民の80.1%が15~64歳の生産年齢層で、移住が経済目的に大きく依存している点が特徴的だ。

居住地域は大都市に集中しており、カサブランカ=セッタ(43.3%)が最大、次いでラバト=サレ=ケニトラ(19.2%)、スース=マッサ(9.4%)、マラケシュ=サフィ(9.2%)が続く。観光、サービス、農業など地域経済の特色に応じて、外国人の定住が進んでいる。

また、外国人を含む世帯の構造にも変化がみられ、モロッコ人と外国人の混合世帯が69.3%(2014年:47.7%)と多数を占め、家庭単位での長期定住傾向が強まっている。

HCPによると、外国人住民の出身国の多様性は、モロッコの移民情勢が再構成されていることを反映しているという。同委員会は、こうした文化的・言語的多様性は、モロッコにとって社会的・経済的な豊かさをもたらす一方で、移民ガバナンス、社会的結束、権利アクセスの平等化といった課題を提起すると指摘している。さらに、HCPは、今後もモロッコの政治的安定性、経済成長、地理的優位性などを背景に、外国人住民の増加が続くと分析している。

(注)HCPが行った国勢調査時に、モロッコ国籍以外を申告したモロッコ在住の個人全てが含まれる。

(鈴木優香)

(モロッコ、アフリカ、世界)

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