日本ラオス外交関係樹立70周年記念事業として仏堂完成式典を開催

(ラオス、日本)

ビエンチャン発

2025年12月15日

日本からラオスへ返還された仏頭を納める小堂「老日庵(ろうにちあん)」完成記念式典が2025125日、ラオス南部チャンパサック県の上座部仏教寺院にあるワット・タートで開催された。ワット・タートは、18世紀から20世紀中ごろまで、同地に存在したチャンパサック王国創設に関わった高僧パ・クー・ポンサメックの仏頭を安置し、王が主催する儀式の場として用いられた由緒ある寺院だ。

この仏頭は、かつて同県の村民が所有していたが、2012年に日本に持ち込まれたと伝えられている。2013年、所有者から在名古屋ラオス名誉領事館へ相談があったことを契機に、両国政府の協力のもとでワット・プー博物館へ返還された。この度、日本ラオス国交関係樹立70周年の節目に合わせ、「日本ラオス仏頭友好親善プロジェクト」として、両国の寄付でワット・タート内に老日庵が建立され、仏頭が安置された。

写真 安置された仏頭(ジェトロ撮影)

安置された仏頭(ジェトロ撮影)

式典には、在ラオス日本大使、在名古屋ラオス名誉領事、チャンパサック県行政委員長らが出席し、関係者の尽力への謝意と、日ラオス関係のさらなる発展への期待が表明された。スクサワン・ビライボン県行政委員長は祝辞で、「今後、新たな観光客をひきつける場として大いに期待される」と述べた。ワット・タートは、世界遺産「ワット・プーと関連古代遺跡群(注)」から市街地寄りに約9キロの場所に位置し、日本人観光客にとっては、世界遺産の訪問に加え、チャンパサック県という新たな探訪先を提供している。これにより、滞在時間の延長や周辺地域での消費拡大が見込まれることから、関係者は大きな期待を寄せている。

写真 新たに建立した小堂「老日庵」(ジェトロ撮影)

新たに建立した小堂「老日庵」(ジェトロ撮影)

2025年は、日ラオス国交樹立70周年および青年海外協力隊派遣60周年の節目の年にあたり、5月のラオスのトンルーン・シースリット国家主席の訪日や、11月の愛子さま(内親王)の初となる海外公式訪問など、両国間の要人往来も活発だ。今回の仏頭返還および小堂建立は、こうした記念すべき年を象徴する文化交流事業の1つとして位置付けられる。

(注)「ワット・プーと関連古代遺跡群」は、5世紀から1,000年以上にわたるクメール建築のヒンドゥー教と仏教の寺院複合体の遺跡。2001年に「チャンパサック県の文化的景観内にあるワット・プーと関連古代遺跡群」として、ユネスコ世界文化遺産に登録された。

(武井浩人)

(ラオス、日本)

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